第63話 変わってしまった日常
◇
休日に偶然、陽菜と出会って。
陽菜が思い出の女の子だとわかって、懐かしい思い出話をして。
だけど変な感じで終わってしまった数日後。
お昼休みに学食で、いつものようにお気に入りの日替わり定食を食べていると、
陽菜:ごめーんたくみん
今日も忙しくていけない感じー
美月と2人でクロトの面倒よろー
ピコン。
軽快な音とともに陽菜からラインがあった。
グループラインじゃないのは、木陰さんには直接伝えているからだろうな。
なんとなくギクシャクしているのを感じていることもあって、それを解消したいって気持ちもあって、俺は即レスで返す。
たくみん:了解~
最近忙しいみたいだけど
俺に手伝えることあったら言ってくれな
基本的に暇してるし
陽菜:ありがとー
でもないとおもうー
たくみん:了解~
陽菜から『ありがとー』スタンプが返ってきたので、俺は『がんばれー』スタンプを返し、ラインでのやり取りはあっさりと終了した。
「そっか。陽菜は今日も来ないのか……」
俺はスマホを置くと小さくつぶやいた。
陽菜が来ないのはこれでもう3日続けてだ。
ここしばらく、平日は毎日のように陽菜と木陰さんが来ていたのもあって、3日連続ともなると、なんとも言えない喪失感のようなものを感じてしまう。
「でもま、忙しいならしょうがないよな」
元々、2人が俺の家に遊びに来ること自体、奇跡に奇跡が重なったようなものなのだ。
来ないのが普通なんだから、俺が不満を言うのはお門違いだった。
俺はいったい何様だっての。
己の立場をわきまえろよモブ男子A。
ここから木陰さんが「じゃあ私もやめておこうかな」って言って2人とも来なくなったとしても、俺がどうこう言えるものではないんだから。
元々、躾けられていたっぽいのもあって、クロトはあまり手がかからない。
面倒は俺一人でも十分見られるしな。
悲しいけど、それがモブ男子Aの現実だ。
◇
そして迎えたその日の放課後。
今まで通り、変わらずに俺んちに来てくれる木陰さんと一緒に、クロトに猫じゃらししたり、ボールころころをしたりして遊んでいると、
「もしかしてなんだけど。拓海くん、陽菜ちゃんとなにかあった?」
遊び疲れたクロトが「やーんぴ!」と反対を向いて床にゴロンしてしまったタイミングで、木陰さんがおずおずと切り出した。
だけど向こうを向いていながらも、声に反応してクロトの耳がピクっ、ピクっとするのがなんとも可愛い。
「いや、何もないはずなんだけど……やっぱり木陰さんも気になるよな」
「だってついこの間まで『クロト可愛いー』って言ってた陽菜ちゃんが、こんなに急に来なくなるのって変だもん。陽菜ちゃんに理由を聞いても、忙しいってしか言ってくれないし」
「だよなぁ。やっぱ変だよなぁ」
「ねぇ拓海くん、本当に陽菜ちゃんと何もなかった?」
そう尋ねてくる木陰さんはいつもの優しい笑顔ではなく、顔も口調も真剣そのもので、陽菜を心配してやまない気持ちがこれでもかと伝わってくる。
だから俺も真剣に心当たりについて考えを巡らせた。
「うーん。特に何かしたってことはないと思うんだけど」
だけどやっぱり何も思い浮かんではこない。
「その、例えばなんだけど……陽菜ちゃんに、す、す……」
と急に木陰さんが言い淀んだ。
なぜか頬が少し赤くなっている。
「すす?」
「だからその、す、す……好きって言ったとか」
「えっと、俺が陽菜にってこと?」
まったく思ってもみなかったことを言われてしまって、俺はおおいにビックリした。




