第51話「あっれ~~? アタシ別にその女の子が美月だなんて、一言も言ってないんだけど~~?」
「ランクマは、クマはクマでもランクマッチのこと。ネット対戦で同じランクの人同士が自動でマッチングするようになってるんだよ」
おかげで初心者狩りも起きないし、勝った負けたのギリギリの試合ができるし、本当にいいシステムだと思う。
「なーる、ランクマッチの略ねー。で、たくみんはどのランク? 真ん中くらい?」
「ここ、MASTERって書いてあるよね? これが拓海くんのランクってこと?」
「うん、そうだよ」
「MASTERって『師匠』とかそういう意味のマスターだよね? え、たくみん、すごくない!? ウケるー!」
「えっと、これは一番上のランクってことなんだよね?」
「MASTERランクも結構ピンキリなんだけど、一番上のランクなのは間違いないかな」
「たくみんってゲーム上手いんだ。やるじゃーん♪」
陽菜がテンションアゲアゲで俺の肩をバシバシと叩き、
「拓海くんってすごかったんだね。びっくりしちゃった!」
木陰さんは驚きを表すように、俺の肩を掴む手にわずかに力を入れる。
「ま、まぁ? それほどでもないんだけどな? しょせんゲームだし。ストライクファイターは前作のVからやってるから、慣れで行けた感じもあるっていうか」
などと口では謙遜するものの。
ふおおっ!?
趣味の格闘ゲームが上手いってだけで、キラキラ女子2人が俺をべた褒めしてくれたんだが!?
ぶっちゃけ、めっちゃ嬉しいんだけど!?
「これはたくみんのこと惚れ直す女子もいるんじゃない? ねー、美月ー♪」
「わ、私は別にそんな――」
「あっれ~~? アタシ別にその女の子が美月だなんて、一言も言ってないんだけど~~?」
「――っ! 陽~菜~ちゃ~ん~~~~!!」
「あはははー♪ 美月ってば可愛いー♪」
「んも~~!」
俺を間に挟んで、やけにハイテンションで盛り上がっている陽菜と木陰さん。
そんなにこのゲームに興味があるんだろうか?
ってことは、これは下手なプレイは見せられないな。
ちょっとガチ目に、目先の勝ちを狙っていかないと!
どんなゲームか見せるために適当に流しプレイをしようと思っていた俺だったが、2人が「たくみんが下手すぎてゲームつまんなーい!」って失望しないように、ガチの全力で対戦することを決意する。
「じゃあ早速、ランクマを始めるな」
学生プレイヤーがドバっと入ってくる放課後という時間帯もあって、ランクマを始めるとすぐに対戦相手が見つかった。
俺はまぁまぁぼちぼち下手ではないと思うんだけど、MASTERランクでの同レベル対戦なので、もちろん相手もちゃんと上手い。
当然、どの試合もかなり競った勝負が続く。
しかし今日に限っては、俺は競った試合をことごとく拾っていった。
負けてもおかしくないギリギリの試合を俺はいくつも勝ちきって、連勝を重ねていく。
きっと俺の後ろに幸運の女神が2人もついてくれているからだろうな。
なんてことをつい思ってしまう(自分で思ってちょっとキモかった)。
「たくみん、うまーい! いけっ、そこだ! おらおら! やっちゃえ、たくみん!」
「わわっ! 上手だね拓海くん!」
この試合もそうだ。
大きく体力リードを取られてしまっているが、ジリジリと地上戦でプレッシャーをかけた俺は、焦れて我慢ができなくなった相手のジャンプ攻撃を対空技のGO昇龍で落とすと、ダウンした相手に流れるような起き攻めをしかける。
そこでの刹那に読み合いに勝って相手のガードを崩してコンボに入り、超必殺技で一気にKOする!
「わーお! 大逆転じゃーん! カッコいいじゃん、たくみーん♪」
「拓海くん、また勝ったね。すごーい!」
「まぁ? 今日は結構、調子がいい気がするな」
とか言いつつ、俺は顔がにやけるのを止められなかった。
頬が緩みまくってるのが自分でもわかる。
自分の得意なことで褒められるのって、たとえそれがゲームでもこんなに嬉しいことだったんだなぁ。
しかもそれが1年生美少女ツートップのキラキラ女子2人ときたら、顔がにやけるのも仕方ないだろう?




