第48話「やーだ! この長さがいーのー! つーん!」
しかし屈んで頭を床スレスレまで下げたせいで、陽菜の短いスカートから真っ白な太もも裏が──ぶっちゃけお尻が丸々、盛大に見えてしまっていた。
「ちょ、おい陽菜!? それはマズいって!」
「陽菜ちゃん、それはダメだよぉ!?」
「んー? なんで2人して焦ってるの? 仲いーねー。ウケるー!」
「ウケてる場合か! おまえ、お、おおお尻が――」
「あっ! 拓海くんはダメ! Look over there!(あっち向いて)」
木陰さんに指示をされた俺はすぐさま横を向く。
なんか今日の俺は横を向いてばかりだな。
自分の部屋にいるのに。
「美月ー、なんで英語ー? ウケるー!」
「だからウケてる場合じゃないんだってばぁ!」
「っていうかさ、なんだっけそれ? この前英語の授業で出てきたよね。えーと、『あっち向いて』だっけ?」
「そうじゃなくて~!」
「あれ、違ったっけ? じゃあどういう意味?」
「だからそうじゃなくて~! 陽菜ちゃんのお尻が見えちゃってるんだってばぁ!」
「アタシのお尻? って――あっ!? もぅ、たくみんえっちー!」
陽菜がミニスカートの裾を引っ張ってお尻を隠そうとするような仕草をしたのが、視界の隅の隅に映る。
いやいや、見てないよ。
マジで見てないよ。
視界の隅で、なんかそんな感じの動作をしたのがチラッと映り込んじゃっただけだから。
って、俺はなに、心の中で自分に言い訳してるんだ。
「そもそも、陽菜がベッドの下を覗き込もうとしたせいなんだからな?」
「そうだよぉ。陽菜ちゃんはアクティブなんだから、いい機会だし、もう少しスカート長くしたら?」
「やーだ! この長さがいーのー! つーん!」
「なんだその反応は……子供かよ」
「15歳は子供じゃん」
「いやまぁ、そうなんだけど」
言葉の綾だろ!
「それに他の男子の前ではちゃんと気を付けてるしー。たくみんの前だけだしー」
「いやいや、俺の前でも気を付けような?」
俺に過度な忍耐を強いるのはやめて欲しい。
お年頃の男子高校生はいろいろ大変なんだぞ?
女の子の前で言ったら「これだから男子は」って言われちゃって俺の高校生活が終わるから言わないけど、男子は皆わかってくれると思う。
「んー、なんかさ? たくみんの前だと安心しちゃうんだよね。なんでだろ? たくみんって、なんか安心物質とか出してない?」
「そんな謎物質は1ナノたりとも出してないよ。そんなこと言われたのも初めてだ」
「ふーん……」
「っていうか、なんでベッドの下をチェックするんだよ?」
もうそろそろいいかなと思って、陽菜に視線を戻すと、姿勢は低いままだがお尻はギリギリ見えなくなっていた。
目に入る光は直進するはずなので、物理法則がねじ曲がってでもいない限り、ほぼ同じ角度で見えなくなっているという事は、スカートをはく高さを下げたのかもしれない。
スカートをはいたことはないので想像だけど。
短いスカートは大変だなぁ。
「えー? なんでチェックするかって、それはもう、ねぇ?」
陽菜が四つん這いのままでにんまりと笑みを浮かべる。
「な、なんだよ?」
そんな笑い方をされたら不安になるだろ?
「えっちな本と隠してあるかもでしょ? むふふ……」
「ああ、そういうことか。いや、ないから」
俺は陽菜の意図を理解して、即答した。




