第44話 ピュアで清純で内気でシャイガールな木陰さん
また俺たちをからかって遊ぼうとしているな、と俺はすぐに察しがついたのだが。
「ひ、陽菜ちゃん!?」
しかし恋愛にあまり興味なさそうで、異性慣れしてなくて、ピュアで清純で内気でシャイガールな木陰さんはというと、やたらと動揺している様子で、バッと身体ごと動かして陽菜に視線を向けた。
「男なら、ねぇ? 甲斐性ってやつ?」
木陰さんの反応に気をよくしたのだろう、陽菜はにゅふふーん♪ と笑いながら、今度は俺をからかおうとしてくる。
俺は苦笑しながら答えた。
「お付き合いって、そんなことあるわけないっての。なにをバカげたこと言ってんだよ陽菜は」
さすがに木陰さんにも選ぶ権利があるだろうよ。
自虐過ぎて2人に気を使われちゃうだろうから、言わないけどさ。
もっと背が高くて明るくて運動も勉強もできる男子は他にいくらでもいる。
木陰さんならそれこそ選びたい放題だ。
木陰さんの恋愛レースで、子猫を助けたことしかろくにアピールポイントがない俺に、出る幕なんてありゃしない。
もし木陰さんが「子猫を助ける男子が好き」とか思っているなら別だけど、そんな都合のいい考えをするほど俺は自意識過剰さんではなかった。
「えー、そんなにバカげてるかなー? 男と女じゃーん?」
「そんなこと言い出したら、俺と陽菜がなにかあっても不思議じゃないってことになるだろ? なぁ木陰さん」
俺としてはからかい上手な陽菜から木陰さんを守るために言ったのだが、
「え、あ、うん……そうだね……」
なぜか木陰さんは少し視線を落としながら、落胆でもしているかのように小さな声でつぶやいた。
見るからにシュンとしている。
「たくみーん、今の答えは0点だぞっ♪ ううん、むしろマイナス120点かも」
「ま、マイナス120点? え、なんでだよ?」
陽菜に呆れ顔をされてしまった俺。
これみよがしに、アメリカ人みたいに大げさに肩をすくめられてしまう。
「答えは自分で考えてみてねー。陽菜先生からの宿題だぞっ」
さらに宿題まで出されてしまった。
うーむ。
これがキラキラ女子たちのいるステージなのか。
陽菜が何を言いたいのかが、正直まったくわからない。
やれやれ。
俺にはまだこのキラキラとしたステージは遠いようだな。
「拓海くん。陽菜ちゃんはいつも適当なことばっかり言うから、イチイチ気にしないでね」
「なにゃ!? 適当!? 美月ひどーい!」
「ほんとでしょー。いつもノリでしゃべってるよね?」
「それは否定しない!」
「否定しないんかい……」
「そういうわけで、私は気にしてないから。ほんとに、ほんとだよ。だから拓海くんも気にしないで、ね?」
「あ、ああ」
さすが木陰さん、モブ男子Aの俺にもすごく優しかった。
思わず俺に好意があると勘違いしてしまいそうになってしまう。
「あと陽菜ちゃんも。拓海くんは助けようとしてくれたんだから、あんまりからかっちゃだめだよ?」
「はーい。ごめんねたくみーん。このとーり!」
陽菜が両手を合わせて頭を下げる。
「それこそ、俺はぜんぜん気にはしてないから。むしろ陽菜の縦横無尽なトークは楽しいし」
「ならよかったー♪ でさでさ。そんなことよりアタシも猫じゃらしやりたから、美月ちょっと変わってよ」
「切り替え早いなぁほんと……」
このトーク回転力の速さ。
俺はついて行くだけで必死だよ。
というわけで、その後は陽菜が猫じゃらしに挑戦し、せっかくなので俺もちょろっとやらせてもらう。
最後はクロトが飽きてキャットタワーの上から2番目の台座(お気に入りの場所)でゴロンするまで、俺たちは猫じゃらしで楽しんだのだった。
ちなみに2人が帰ってから、グループラインで木陰さんが猫じゃらしってる動画が送られてきたのだが――。
そこには俺と木陰さんが抱き合うシーンがもろに映っていた。
一連の流れも映っていたので、俺の無実は完璧に証明されてはいるのだが。
いかんせん手がスカートの中に入っているのがハレンチ過ぎた。
「これ、消した方がいいか2人に確認した方がいいかな? でも2人もわかってるのに何も言ってこないってことは、問題ないって考えてるんだよな? なのに俺から言い出すのは、エロに意識過剰すぎる気がしなくもない……」
どうする。
どうする俺?
言うべきか、言わざるべきか――。
俺は散々迷った末に、「動画ありがとう」と書いてスタンプとともに返信した。
だってほら、木陰さんを抱きしめる動画を消すのが、すごくもったいなくてさ……?
子猫を助けたら俺んちが1年生キラキラ美少女ツートップの溜まり場になった。 ~2人の少女が恋したのは、昔の俺と今の俺――。
を応援いただきありがとうございます!(*'ω'*)
ご好評いただいている当作品ですが、連載中にも関わらず、なんと書籍化が決まりました!٩( ''ω'' )وウォォォ
応援してくれた皆さんありがとうございます!
子犬の次は子猫。
もはや「動物を助ける系ラノベ作家」となりつつありますね!(笑)
レーベルなどはまた後日、公開できるようになりましたら発表いたします。
今日はとりあえず書籍化のご報告ということで。
改めて、応援していただいたみなさん、ありがとうございました!
書籍化作業、頑張ります!!٩( ''ω'' )وウォォォ




