第43話「スベスベマンジュウガニ」な木陰さん?
「でもほんとに離してくれないね。美月、もうちょい力を入れれない? こう、グイッて。壊れない程度でいい感じに」
「わかった。やってみるね」
陽菜がかなりアバウトに言ったものの、親友だけあって木陰さんは意図をしっかり汲み取ったようで、いい感じに強めに釣りざおをグイっと引っ張ったのだが──。
「あっ──」
クロトの両手から、もふもふがいともあっさりと抜けた。
多分だけど、木陰さんが力を入れたからじゃない。
クロトがゲシゲシ足キックしていた間に、もふもふに引っかかっていた前足の爪が外れていたのだ。
そのため何にも引っかかることなくスポッと抜けてしまったのだ
しかしそのせいで、猫じゃらしを引っ張ろうとして勢い余った木陰さんの身体が、後ろに倒れる。
「木陰さん――!」
「はわ――っ!?」
俺は木陰さんの身体を支えようととっさに両手を出した。
しかし一瞬の出来事にも関わらずどこか冷静だった俺は、つい昨日、同じような状況で木陰さんのおっぱi──こほん。
胸を揉んでしまったことを瞬時に思い出し、木陰マウンテンをハレンチしないように、手を下へ向かって伸ばす。
同じ過ちは繰り返してはならない。
人間は学習する生き物なのだ。
まるで世界の流れが遅くなったかのように、状況を瞬時にかつ冷静に判断した俺は、木陰さんの身体をノーハレンチで抱き留めた――はずだった。
…………。
…………。
…………あれ?
なんだろう?
なんか手が当たってる所が、すべすべしてて、もちもちもしてるな?
人肌のような優しいぬくもりも感じるし、しっとりとしていて手の平に吸い付くようでもある。
ふと「スベスベマンジュウガニ」というカニがいることを思い出した。
さわさわ。
手のひらを軽く動かすと、
「ぁ――っ♪」
俺の腕で、後ろから抱きすくめられている木陰さんの口から、ドキッとするような甘く切ない声が漏れた。
…………(滝汗)
俺は逸る気持ちを抑えながらおそるおそるゆっくりと視線を動かして、自分の手がどこにあるのかを確認する。
確認した。
しました。
えー、あの。
その、はい。
なんと言いますかですね。
つまり俺の手がですね、木陰さんの太ももをさわさわしてしまっていたんです。
しかも手がスカートの中に入り込んでしまって、ダイレクトアタックな状態です。
……………………(滝汗×∞)
俺はもうこれ以上は余計なところを触ることがないようにと、ゆっくりとスカートの中から両手を引き抜いた。
手の甲をスカートの布がスルリと滑り落ちる感触が、妙に艶めかしく感じられてしまう。
たかが布切れなのに!
「ん――っ」
しかも木陰さんの口からは、またもや切なげな吐息のような甘い声が漏れ出でた。
ハレンチ行為を終えた俺は、抱き着いていた身体も離すと、一度大きく深呼吸をする。
そして全力で謝った。
「本当にごめん! 木陰さんがバランスを崩したから助けなきゃってとっさに思ったんだ。それで昨日はいろいろとあったから、今日はそういうことはないようにしようって、これもとっさに思って!」
「う、うん。わかってるよ、拓海くんに悪意はなかったことくらい――」
木陰さんが納得するように言いかけた言葉に被せるようにして、
「でも結果的に美月のスカートの中をお触りしちゃったと。お触りたくみんだったと」
陽菜が動かぬ事実を容赦なく突きつけてきた。
事実に関してはテコでも動かない確定的に明らかなことなので、そこで争うことはできない。
情状酌量をもらうためには、俺の内心を誠心誠意伝えなくてはならなかった。
「か、過失であることは考慮してもらいたいかな、って……とっさの判断でさ……」
故意にお触りしたスケベ男子と思われるよりは、過失だと女々しく言い訳するヘタレ男子と思われた方が1億万倍マシだ。
スカートの中の内匠頭とかキラキラ女子グループで噂されたら俺の高校生活が死ねる。
「なるほどねー。それは仕方ないかなー」
「だ、だよな!」
「でもこれはもうたくみんも、責任とって美月とお付き合いしないとねー」
しかしここにきて陽菜がさらにアホなことを言い出した。
いつも「ねこたま」をお読みいただきありがとうございます!
本日8/8、重大発表があります!(ΦωΦ)
活動報告、Xなどで告知がありますのでどうぞお楽しみに~!




