第39話「あはは、たくみんは初心だね~♪ ウケる~♪」
「さすが男の子♪ やるじゃん、たくみん。陽菜ちゃんポイント1点あげちゃう♪」
「サンキュー」
例の特に何も起こらないポイントな。
まぁキラキラ陽菜に褒めてもらえるのは、ポイントとか関係なくそれだけでも嬉しくはある。
男の子はちょろいから。
そして俺も男の子である。
「拓海くん、すごいね!」
「俺は説明書通りに作っただけだよ」
「そんなことないよ。多分、私一人じゃ作れないもん。きつく締めるところとかもあったよね? だから拓海くんはすっごくすごいと思うな」
目をキラキラさせながら、胸の前で両手をギュッと握って、妙に力説する感じで俺を褒めてくれる木陰さん。
「そ、そうか? ありがとう。でもほんと、たいしたことはしてないぞ?」
照れた。
ちょう照れた。
キラキラ木陰さんに褒め褒めされて、俺はめちゃくちゃ照れていた。
「たくみーん。そんなこと言って、俺にかかればこれくらい余裕さ、とか内心ドヤってるんでしょ? 惚れ直しな美月、とか思ってるんでしょ?」
惚れ直しって、まるで木陰さんがもう俺に惚れてるみたいな言い方だな?
ま、からかってくる陽菜にツッコんでも、もっとからかわれそうなのでそこはスルーする。
「そんなこと思ってないから」
「ほんと~? その割にはまんざらでもなさそうな顔してるけど」
「女の子に褒められたら、男子はこうなるんだよ。ほっとけ」
「あはは、たくみんは初心だね~♪ ウケる~♪」
「俺のことはいいだろ。それよりほら、せっかく完成したんだからクロトを呼んであげないと」
「あはっ、そうだよねー。クロト、おいでー。こっちこっち」
「クロト、おいで~」
トテトテトテ。
俺たちがキャットタワーを組み上げるのを、猫ハウスから我関せずでボーっと眺めていたクロトが、陽菜と木陰さんに呼ばれてやってくる。
しかし新たに出現したキャットタワーを警戒しているのか、ふんふんと柱回りの匂いを嗅ぎながら周りをうろうろするだけで、キャットタワーに登ろうとはしない。
「クロト、これは登って遊ぶんだ」
俺はクロトを抱っこすると、キャットタワーの一番下の足場(っていうのか)に乗っけてあげた。
みゃあ……?
クロトは最初こそおっかなびっくりだったものの、すぐに安全なものだと理解したのだろう、すぐにキャットタワーを上り下りし始めた。
「気に入ってくれたみたいだね」
「可愛い~♪」
陽菜がスマホで撮影を始め、木陰さんはほわんとした顔になる。
登って、降りて、登って、降りて。
「やーん、可愛い~! クーロト、こっち向いて~」
「わ、私も動画撮ろっと……」
たったそれだけのことで、クロトはキラキラ女子たちを虜にしてしまった。
それはさながらランウェイを歩くトップモデルのごとし。
言うなればキラキラにゃんこ。
す、すごい。
俺は今、ものすごい格差を見せつけられているぞ……。
キラキラ女子たちを魅了したキラキラクロトは、昇降をしばらく繰り返した後、上から2番目の足場に身体を投げ出すように寝転がった。
そのまま目を閉じて動かなくなる。
「あれ? なんか寝そべったまま動かなくなったね? おーい、クロトー。おーい」
「ぜんぜん反応しないね? 寝ちゃったのかな?」
「寝るのはいいけど、落ちないよな?」
「大丈夫じゃない? 猫だし」
「猫だもんね」
「猫だもんな」
猫とはそういう生き物である。
とまぁそんな感じでキャットタワーでクロトが寝た頃にはすっかりいい時間になっていて、
「じゃあまたね、たくみん。ちゃおー」
「お邪魔しました。またね、拓海くん」
キラキラ女子たちは仲睦まじく俺んちから帰っていったのだった。




