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第15話「見せるのは、た・く・み・ん、だーけ♪」

「水着とは違うよね、拓海くん」

「水着も見せパンも一緒でしょー? ねー、たくみーん♪」


 陽菜と木陰さんの視線が揃って俺を捉える。


「ええっと……」


「拓海くん?」

「たくみーん?」


 もちろん木陰さんに味方するのが一般的な模範解答だ。


 陽菜からしたら見られても平気な見せパンなのかもしれないが、俺(も含めたおそらく大多数の男子)にはぶっちゃけ下着に見える。

 見えない方がおかしい。


 むしろ黒下着とか、えっろ!? とも思った。


 男子がそういう哀れな生き物であることを、俺は否定できない。

(悲しいかな、俺もその哀れな生き物の一員である)


 だがしかし。

 それではさっき陽菜が見せたてきた見せパンを、俺がエロい目で見ていたと自白することになってしまうのではなかろうか?


 不用意な立場に立たされないためにも、木陰さんの意見には同調しづらかった。

 木陰さんから、女の子のパンツに興味津々のエロ男子とか思われたら最悪だ。



 しかしだからと言って陽菜に味方すると、木陰さんから俺の常識が疑われてしまうのではなかろうか?

「見せパンだから好き放題見ちゃうよ、何か問題でも?」なチャラい系男子とでも思われたらこれまた最悪だ。


 俺はなんと答えたものかと必死に頭を巡らせ――、


「自分からスカートをまくるのは、ちょっとはしたないかもな」


 どちらの味方をするでもなく、絶妙に論点をずらした答えをひねり出した。


 ナイス・アイディア!

 俺、がんばった!


「ふむふむーん。それは、そうかも」

「だろ?」


「まぁ別にどっちでもいいんだけどね。自分から見せることなんて、基本ないし」


「俺の記憶が正しければ、つい今さっき自発的に見せられたばかりなんだがな?」


 天野陽菜、お前は何を言っているんだ?

 もしかして若年性アルツハイマーでも発症してるのか?


「そんなのたくみんへの特別サービスに決まってるじゃーん。心配しなくても、他の男子にはしないから安心していーよ♪ 見せるのは、た・く・み・ん、だーけ♪」


 陽菜が顔の横で右手でキツネさん(親指と人差し指と小指を立てる)を作りながらウインクをした。

 マジ可愛すぎてヤバイ。


「いやいや、そういうのは要らないから。安心とかも全然そんな、気にしないし」


 やめて!

 思ってもないことを言ってキラキラ女子の前でカッコつけてんじゃねーよ、とか言うのはやめて、もう一人のボク!


「えー? その割にはたくみん嬉しそうだったじゃん? 顔がにやけてたよ? アタシ見てたんだからねー?」


「あ、はい、すみませんでした」


 ド・ストレートに図星だったので、俺はこれ以上やぶ蛇にならないように口を閉ざした。


「それより子猫の名前を決めてたんでしょ? ねーねー、さっきも言ったけどクロはどう? 黒猫だからクロ」


 そしてドギマギしっぱなしの俺とは違い、陽菜的には割とどうでもいい話題だったらしく、陽菜はあっさりと話を元に戻した。


「うーん。ちょっとまんまかなーって思うんだよなぁ。ちなみに木陰さんは何かある?」


「そうだね……クロトとか? ごめんなさい、わたしもちょっと安直かも」


「いいな。じゃあこの子の名前はクロトってことで」

 俺は木陰さんの案を即決した。


「ちょっとたくみん、今のひどくなーい!?」


 すると自分の案が却下された陽菜がムキーとなりながら、俺の両肩を掴んでズイっと顔を寄せてきた。


 俺のすぐ目の前に陽菜の顔があり、まるでキスする直前のような体勢だ。


 感情豊かにくりくりとよく動く大きな目。

 鼻のラインはスッと整っていてモデルのようだ。

 吸いこまれそうになるぷるぷるのリップ。

 オシャレなふわふわボブ。


 陽菜は怒り顔でもアイドル顔負けで可愛さいっぱいだから、こんな風に顔を近づけられたらドキドキがさらに加速して大変だった。


 しかも甘くていい匂いまでしてくるし――って、それは置いといて。


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