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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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『じゃあ次は前回の流れで北野天満神社のすぐ横にあった風見鶏の館に

行ってみましょうか』

との山下からの提案で返事をもらった2月には、早速風見鶏の館へと

足を運び、前回同様穏やかで楽しい時間を百子は過ごした。



 あちらこちらと何軒も梯子をしないので帰りには北野坂支店の

にしむら珈琲店に立ち寄り互いの近況や立ち寄った異人館の話題で

二人はコーヒーを味わった。



 そんな風にして二人は続けて3月には土日を利用して二度、うろこの家・

展望ギャラリー、ウィーン オーストリアの家へと。


 そして4月にも二度、香りの家オランダ館、英国館へと出かけた。



 もう山下から百子が行きたいところを尋ねられることはなく、

場所を決めていついつどこそこに行きましょうという誘いのメールが

届けられるようになっていた。


 どこでも山下となら百子はうれしかった。


 行き先の予定に始まり、行く先々でやさしくエスコートしてくれ、

一緒に食事のできる男性がいるなんて何て素敵。



 それは百子にとって素晴らしく生きる活力になった。

 その後も山下は頻度も同じ感覚で誘ってきた。


 5月には萌黄の館と神戸トリックアート・不思議な領事館、

そして6月にはラインの館を訪れた。

 その日は大安の日だった。



 いつもはそんなこと気にしたこともなかったのに、何でだろう。

 たまさかの偶然としか言いようがないのだが。


 たまたまいただきもののその辺に埋もれていたカレンダーに気付き、

もうお気に入りのカレンダーを使っているので紙の日にでも捨てようかと

丸めたのだが、途中で山下との約束の日が目に入ってきて

『へぇ~、大安なんだ。一応縁起のいい日なんだ』

なんて記憶していたのだ。




 6月は一度目に出掛けることになったのがすでに20日を過ぎていたので、

今月はもしかすると異人館巡りが一度になるかもしれないなぁ~などと、

帰る道々ぼんやりと考えていた。


 ふたりはいつものように……

お茶も済ませてタクシーを拾いJR三宮駅で降りた。


 そしていつものように……

 この駅で東西別々に帰らなければならない別れの瞬間(とき)

迎えた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



「さよ……」

と挨拶しようとした私に山下さんが


「百子さん、実は次の予定は立てていません。

 異人館巡りは今回で最後にしようと思います」

と言ってきた。



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