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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 北野天満神社へ行った日に

『まだまだ見たいところが満載なのでまた来月こちらに来ませんか』

と百子さんを誘った。



 そうしたら彼女が

『いいですね。次はどこに行きましょうか』と返してくれたので俺は

『百子さんのお好きなところへ行きましょう』と言った。



すると

『ありがとう。じゃあ、考えておきますね』

と彼女の前向きな言葉が返ってきた。




『ありがとう』

と答えた彼女が可憐で自分が自然と彼女に微笑んでいたのを

記憶している。



 ああいうのを幸せな瞬間っていうのかな。


 ……なのに翌々日に次の予定を訊くと

『脚の調子が芳しくなくて折角誘っていただいたのに行けそうもありません』


という返信メールが届き……。



 そしてそのメールには続けて


『気心の知れた若い人たちと行かれたらいかがですか』

と書かれていたのだ。



 最初の一文だけならさほど首をかしげることもなかったと思うが

『気心の知れた若い人たちと云々』

は何か嫌な感情を芽生えさせるのには十分だった。



 脚の不調で行けないという断りにどうしてそのような文を追加する

必要があったのか? 



        

 自分が彼女に恋心を持っているせいかもしれないと思い、

山下はふっと感じてしまった嫌な感情を手放すことにした。



 ようやく自分の気持ちを宥め、嫌な感情を手放したと思う間もなく百子から


『山下さん、こんにちは。先日は大変失礼致しました。

 あれからまだ数日しか経ってないのですが思ってたよりも早く脚の状態が

良くなりましたのでやはり異人館街へご一緒させていただきたいと思います。

まだ大丈夫でしょうか? 可能でしたらぜひ宜しくお願いします』


と思いもよらない丁寧な文が届き、山下の気持ちはせわしなく

乱高下するのだった。




『参ったなぁ~』

 百子に気持ちを揺さぶられる自分が滑稽ですらあった。




 行けないと言われ、ガックリきた自分。

 自分がどれほど落ち込んだのか彼女は知らないだろう。



 そしてようやく自分の気持ちを立て直したと思ったらやっぱり

誘ってくださいという話に。



 山下はたっぷりとその短文を3~4分は眉間に皺を寄せながら眺めた。


 眺めながら山下はすでに予見していた。

 うれしくて喜ぶ自分の気持ちを。


『よかった……』と独り言ちた。

 これでしばらく百子と接点を持ち続けることができるのだ。


 月に一度か二度北野の異人館巡りを二人で楽しみながら百子に

自分という人間を知ってもらえればと山下は考えた。



 百子のほうでも山下から


『じゃあ次は前回の流れで北野天満神社のすぐ横にあった風見鶏の館に

行ってみましょうか』


とすぐに返事をもらい、これから何かが始まるのかもしれないと……

そんな風に淡い期待を胸に抱かずにはいられなかった。


 

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