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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 山下と一緒に歩いて回った観光スポット北野天満神社は見応えもあり、

その前に一緒に摂った食事も美味しくて本当に楽しい時間だった。



 だけど次回は止めておこうと思った。


 3回目の誘いがあるかまでは予見できないけれど2回目異人館巡りに

行けば次もと期待してしまいそうだし、誘いがなく2回目で終われば

終わったできっと自分は心乱されそうで嫌だ。



 山下がどのような気持ちで自分を誘ってくれたのかが分からない状況は

百子にとってストレスになっている。



 異人館前広場で偶然出くわした山下の会社の若い女性社員の出現前までは

あまり深く考えずに次誘われたことを嬉しくさえ思っていたというのに。



 自分でもよく分からない感情を持て余す百子だった。


 普段の自分ならわきまえていて……というか、元よりそんな気にも

なりはしないはず。


 なのに今回は出先で20代の女性の存在が気になってしまったのだ。

 原因が山下にあることは薄々内心で気付いている。


 だけど相手が恋人なり伴侶であれば有り得ることかもしれないが

小説で繋がっているだけの相手なのにおかしいだろうと思う。



 相手が山下でなくてもきっと一緒にいたのが年下の異性で自分たちの目の前に 

突然若い女性が出現したらおそらく似たような感情になるのかもしれない。




 いくつになっても女は女……か!

 あの彼女も山下も自分のこのような妙ちくりんな有り得ない感情など

微塵も想像できないだろう。



 自分でさえ、初めての感情に揺さぶられ驚いているくらいだから。

 年齢を重ねてみて初めて見えたもの。


 名前をつけるとするなら若い女に対するジェラシーっていうヤツだ。

 おばさん、正気? って言われそう。



 自分の醜い感情を知ってしまったからには……やはり次の異人館巡りは

行ってはならない、と百子はそう思うのだった。



 すぐにでも断りの連絡を入れたかったがそれはそれで

すごく失礼なような気がして戸惑われた。

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