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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 神社の境内から眺めた景観のすぐ目の前に見えていた美しい風見鶏の館は

神社の階段を下り右手を見るとすぐに視界に入ってきた。


 なぁ~んだ神社のほぼ真横に建ってたんだ。

 上からだと距離感がちょっとよく分からなかったけれど。


 風見鶏の館の前には北野町広場がありここからも下方の街並みが

よく見えた。



「神社から見た景色とはまた少し違って見えますね」


「そうですね。少しだけ下界に近づいてるからかしら」


「ぼちぼち帰るとしますか。疲れてませんか?」


「いいえ、と言いたいところだけど少し……」


「私もです。日頃の運動不足がたたってますね。

 新神戸駅のほうへ歩きながらタクシーを拾いますよ」



「三宮からは遠いんじゃありません?」


「タクシーを捕まえられなかった時の保険です。

 新幹線の駅だと確実にタクシー乗れますからね」



「……なるほど」



 帰りの足を気にしながら広場から出て行こうとしたら、

私たちの後ろから声がした。



「山下さん……」


 その声に反応して山下さんが後ろを振り返った。




「やぁ、島本さん寒いのに異人館巡りに来てたんだ」



「その発言はちょっと……」




「そうだよね。俺も来てるのに、ははっ。

 だけど俺は天満神社にお参りした帰りだ。

 異人館は巡ってないから」



 私は気を利かせてこちらへ少し頭を下げてくれた女性と山下さんのトークが

始まったので、遠慮させてもらおうと近くにあった長椅子に腰かけて

話が終わるのを待つことにした。



 私と話をする時とは随分違う印象の山下さんの朗らかな話し方に自分の

今までウキウキしてた気分が……テンションが一気に下がっていくのを感じた。




 山下さんと話している女性は20代後半か30代前半にしか見えない。



 ここでどうしてだか分からないが自分が50代であることに打ちのめされ、そしてそのことに(いた)く傷ついた。



 いくつになっても女は女なのだと確認させられたような気持ちになったからだ。




 山下さんは恋人でもなく異性として恋してるわけでもなく、それでも

自分より随分若い同性が出現するとこんな俗っぽい考えに至るのだと思うと、

あまりに痛すぎてそんな自分が嫌になった。





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