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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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◇石田から百合子への三行半


「百合ちゃん妊娠した時さ、どっちの子か分からなかったはずなのに

どうして石田さんには妊娠したと話しに行き、俺には連絡がなかったのかな。

それってなんでなんだ?」



「えっと、だって早瀬くんとは付き合ってなかったし……」



「だけど、もし妊娠したら責任は取るってあの時俺言ったよね」



「……」



「行きずりの行為だったから俺のこと信じられなかったんだ」



「そういうのは、あったかも」



「石田さんが大金持ちだったからなのか?

 それとも俺より石田さんが好きだったからか?」




「早瀬くんごめん。

 分からない、そんなの今聞かれても分かんないよ~」

 答える百合子は涙ぐみ、声は震えていた。



「最初は石田さんのこと好きだから付き合ってたけど、自分がただの浮気相手で

しかないって分かってからは好きじゃなくなった」


「じゃあ、なんで……」




「分かんないけど、たぶん奥さんに勝てなくて悔しかったんだと思う。


 それに私のことを遊び相手にしか思ってなかった石田さんにも腹が立って、

それなら子供を作って財産乗っとってやろうじゃないの、みたいなヤケクソな感情に

支配されてたかも」





「そんな理由で結婚しようとしたんだ」



「奥さんのほうが一枚上手だった。

 奥さんからの大人しく離婚する代わりの条件が今すぐには判を押さないって

いうものだったんだけど、慰謝料や養育費だけは先に一括して石田さんが

支払うっていう形になってたの。



 石田さんの会社が傾く前の話だから、彼女には何か良い力っていうか

表現が難しいけれど、そういうものが備わっているのかもって思うわ」





「縋り付いたりしない潔さが良い結果をもたらしたってわけだな。

 それで百合ちゃんは傾き出した船からとっとと降りて逃げちゃったんだ、

俺のところへ。


 百合ちゃんさ、翔麻が俺の子だっていうのは産んだ時点では分からなかったと

しても成長するにつけ、分かったはずだよね」





「うん、早瀬くんに瓜二つだもん。

 分かってた、だから……」



「石田家を出た後、俺のところへ来た」




「うん、言う通り。

 実家に3ヶ月置いてもらっている間にいろいろ考えて早瀬くん家へ

来ることにしたの」



「百合ちゃん、頼って来た時に打ち明けてほしかったわ。

 いろいろ嘘が有り過ぎて、俺には手に負えない。


 翔麻は俺が引き取ってもいいし百合ちゃんが連れて行きたいと言うなら

養育費は出すよ。

 

 どちらか好きな方選んでいいから……」




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