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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 試写会は日曜なんだけど映画の公開日は来月の金曜日らしい。



 今までは土曜が公開日というのが一般的らしかったけれど、今年から

金曜夜の余暇を充実させる「プレミアムフライデーへの協力施策」、

土曜日に働く社員を減らすことによる「働き方改革の一環」という側面から

金曜日に決まったのだとか。





 映画なんて最近映画館で見ることないし、ましてや最新作の公開日を待って

見に行くというのもなく、今回のようなことがなければそのような映画業界の

決めごとなど知らずにいただろうなぁと思う。




 私は山下さんとの電話の遣り取りの後、私にとっての重要なことを

思い出した。



 あーっ、電話で聞けばよかった。

 いや映画見れば自ずと分かることじゃない。

 一週間すれば分かるんだから。



 メールして山下さんに訊いてみようか、いや忙しい人なんだから

止めておこう、とかいろいろ葛藤した末なんとか私は山下さんにメールで

訊くことを食い止められた。



 私が知りたかったのは配役で、主に主役とその別れるだろう夫役の俳優だった。



 つまりモデルの私と夫の配役である。

 気になって気になって。

 その意味でも試写会が待ち遠しかった。




 しかして、完成披露試写会を迎え、監督、キャストなどが祭壇し

トークを行う舞台挨拶で壇上に現れた主演の夫婦役の女優と俳優を見て

感無量になった。



 ふたりとも、とても素敵な俳優たちだったから。


 自分史がこんな素敵な演技者たちに演じてもらえるなんて……

胸が詰まり本当に固まってしまった。





「石田さん、僕、石田さんの役をされてる石田さんと同じ苗字の女優さん

大好きなんですよ」




「……」



「どうしたんですか、石田さん」




「私、今固まってます。

 配役のお二人が余りにも素敵過ぎて。


 山下さん、絶対この作品がノンフィクションだなんて口が裂けても

口外しないでくださいね。


 世間に知れたら、恥ずかし過ぎてボトっと倒れてしまいます」






「了解です。絶対真実は伏せますから」




「先週電話くださった時には配役が誰なのか知ってたのでしょうか?」



「いえ、知りませんでした。案内くれた人に聞き忘れてました」



          ◇ ◇ ◇ ◇






 百子は山下の返事を聞き、あの後メールを入れて訊かなくてよかったと

改めて思った。




 あんなに馬鹿みたいに悩んで聞くのを断念したことが、何気に悔しかった。





 試写が始まる前から嬉しくて興奮したり固まったり……そして悔しがったりと

感情の(せわ)しない百子なのだった。






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