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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 こうなってしまったからには、妻の気持ちを考えると一日でも早く

家を出たほうがいいのではないかと思うものの、この先娘や息子と頻繁に

会えなくなると思うと伸之は踏ん切りがなかなかつけられなかった。




 養育費や慰謝料の話など互いに弁護士を通してこれから話を進めていく

わけだが、出来る限りのことをするのだから頻繁にとはいかないだろうが

子供たちとはこの先も会えるはず。



 だが息子はともかくとして娘はもう中学生だ。


 実際問題、異母兄弟など作り自分の母親を捨てるようにして出て行く自分と

果たして会ってくれるだろうか。



 そんなことを考えるとなかなか即日家を出るということができない

伸之だった。



 そんなこんなで、その後伸之は一月(ひとつき)余りした後、自宅を

出て行った。



 約一ヶ月の間、百子が子供たちには何も告げてなかったので今まで通りの

波風立たない日々を、最後の日々を、4人で過ごすことができた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 伸之が自分たちを置いて完全に家を出てからも百子は子供たちには

夫の単身赴任という態で臨み、その後もしばらくの間、離婚の話をすることは

なかった。



 一日でも長く、娘たちには無邪気な子供時代を過ごさせて

やりたかったからだ。



 正直、別れ話をされた後の伸之との一ヶ月はキツいものがあった。



 だがその伸之も師走を前に家を出た。

 さて、これからは自由だ。

 主婦業は終わったのだ。



 もちろん子供たちがいるので家事をすることはこれからも続くが

伴侶のいる主婦業は終わった。



 予てより考えていた小説を書く為に、多くの時間を自分の為に使うのだ。

 後は伸之の出してくる離婚の条件と自分の条件のすり合わせを待つのみ。


 長引いても自分はちっとも困らない。

 伸之はこれまで給料やボーナスなど、全て自分にまかせてくれていた。



 夫がお金に鷹揚なのは性格もあると思うが、不労所得などがあったことも

一因ではなかろうか。



 夫は結婚直後にはすでに給与が年収換算で700万円以上あり

不動産や株などの資産も併せると現在では年収総額が3000万円弱ある。

 なんといっても不労所得分の占める割合が大きい。


 贅沢もせずせっせと14年間の間に励んだ貯蓄(へそくり)の額は

相当のものだ。



 へそくり以外の夫が認識している正規の貯蓄もかなり貯めてあるので

自分が密かにせっせと貯めたへそくりの額を知ったら驚くだろう。



 まぁ、夫が知る日は永遠に来ないだろうが。


 その正規の貯蓄もガラス張りにしてあるので離婚の暁には折半となろう。


 すでに子供たちの学資保険も一括で済ませてある。



 さぁ、どう出るのか……『かかってこい、カモーン』の気分である。





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