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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 翌日曜日、私は夫から『大事な話があるから……』と、言われていた

大事な話とやらを聞くことになる。



 伊達百合子との顛末を話され


『相手に子供ができた以上責任をとらなければならない。

 申し訳ないが離婚してくれないだろうか』


と告げられた。



 責任をとらなければならない、か。



 私たち家族への責任は放棄するのね、話を聞きながらそんな怒りが

沸々と湧き上がってくる。



          ◇ ◇ ◇ ◇



 相手に子供ができたという話をすると妻の目の中に


『既婚者の癖して避妊もせずにそのような行為をしたのか』


と、咎めてくるものを感じた伸之は弁明の言葉を発した。



 百合子とは弾みでそのような関係になり、勿論結婚など考えても

いなかった。



 だからちゃんと避妊もしていた。


 ……してはいたが結果的にこういうことになってしまったわけで、

申し訳ないと思うがこうなってしまった以上責任を取りたいと思っている、と。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 全く、この人はどうなっているのだろう。



 自分の妻との避妊には一度も失敗したことがないというのに、

相手が変われば避妊は有効ではないとでも?


 微塵も疑いを持たない夫の言動に失望させられた。



 そして伸之の次の言葉に百子は唖然とさせられた。



 贖罪のつもりなのか何なのか、伸之は話を続けた。



「ほんとはね、このままじゃいけないと思い一度別れたんだけどね」


「今更だけど、訊いてもいい?

 別れる切っ掛けって何だったのか気になるわ。


 考えてなかった相手との結婚は妊娠だけが理由なの?

 私のこと、嫌になったの?」



「君に不満なんて一切ない。

 良い奥さんでいい母親だよ。

 俺の両親とも上手くやってくれて。


 別れることになった切っ掛けは伊達から結婚してほしいと請われたからで、

彼女と一緒になることを選んだのは妊娠したことが大きい」




 結婚を迫り、一度は殊勝に引き下がり別れた伊達百合子。



 そしてその後の妊娠。

 あまりに出来過ぎた妊娠。

 しかも、避妊していたというのに。


 避妊していたというのは私に対するただの言い訳で夫の嘘なのか。


 一度は家庭に戻る為、夫は百合子との別れを選んだという。


 そんな男の子供を今頃になって妊娠?



 夫は相手の女と付き合い出したのは最近みたいな言い方をしているが、

少なく見積もっても2年前から、私が興信所に頼んだ時期と百合子の入社時期を

鑑みて、3年も前からの付き合いの可能性もある。



 だからだ、今までなかった妊娠を振られた後に……するかー。



 絶対ないとは言い切れないが、出来過ぎてはいまいか。



 怪し過ぎるのだ、百合子の振舞いが。

 しかし、この疑惑を百子が伸之に告げることはなかった。



 自分の子ではない子をこの先我が子と信じて養育し、他の男の子を

伸之の子だと誑かし伸之にぶら下がろうとする女を養っていくという夫。



 想像するだけで痛快じゃないか。


 遠い先で伸之が病に臥せり、子供たちへ渡す遺産相続などの問題が浮上した

時に、DNA鑑定の申請をしてやればいい。



 自分は伸之との間に産まれた子らの相続にかかわる親の立場なのだから。



 そう、今言ってやる必要はない。


 不慮の事故で伸之が亡くなり、全てが百合子の子に渡ってしまうなら、

それも天命というものだろう。



 百子は腹を括った。


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