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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 伸之にとって百合子との関係は、割り切った関係とずっとそう考えてきた。


 妻の百子に何ら不満はなかったからである。




 だが、運命の歯車とでもいおうか、百合子の思わぬ妊娠とそれによる

百子との離婚話、父親の突然の引退宣言で今勤めている会社を辞めて

父親の会社を継ぐことになるという、一度に二つの大きな転換点を

迎えることになり、ここにきて伸之の気持ちも別の方向へと大きく傾く(舵を切る)

ことになるのだった。




 常々自分が父親の跡を継いだら大きく変革を起こしたいと考えていた。



 父親から百合子との仲を賛同された今、営業能力のずば抜けて高い伊達百合子との

二人三脚で今の会社を新星企業として風穴を開け業績を伸ばしたいという野望が

ムクムクと頭をもたげてくるのだった。



 その高揚感たるや、もう誰にも止められないほどに育ち、根付いていった。



 それからほどなくして伸之は百合子に先月の返事をメールで送った。




『待たせたけれど、あの件は了承した。

 ちゃんと認知はする。具体的な話はまた後日話し合おう』


と締め括り。


          ◇ ◇ ◇ ◇




◇無慈悲な説得


 週の真ん中当たりで夫から


『大事な話があるから日曜日は子供たちを実家に預けておいてくれないか』


と言われる。




『来たるべき時が来た』

百子はそう思った。



 結婚する前から一情報として知っており、心の準備をしてきた。


 自分が調査をした時にはすでに二人の関係は始まっていた。



 振り返ると2年から3年の関係になると思われる。


 伊達百合子の入社時期が4年前なので最長でも4年、それ以上にはない

というのは確実だ。



 大事な話というのが彼女の話なら、あれからもずっと続いていて、

今まで口を噤んでいたのに私に話すということは推して知るべし、と

いうことか。



 すぐにそんなことがあれやこれやと百子の脳裏を駆け巡った。






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