表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/117

29

29





「いつからの付き合いなんだ、その女とは」


「もう少しで3年になります」


「部下ということだが、その相手は仕事はどうだ」



「中途採用されたくらいですから仕事はできます。

 特に営業力には目を見張るものがあります」


「今の石田貴金属(株)の今後の展望を考えた時、大きく飛躍するのに

役立ちそうかね」



「営業の率先力としては魅力的ですね。

 彼女との今のような拘わりがなければ辞めるに際して

引き抜きたいくらいには」





「今の会社を何倍も大きくしてくれることを私はお前に期待してる。

 その何て言ったかな、女性」




「伊達百合子です」




「伊達さんを引き抜いたらいいじゃないか。

 もちろん今の会社にもろバレしないような形でな」





「しかし……」



「伊達も子供も引き取って、子守はどこぞで雇ってもいい、うちの会社の

率先力になってもらえばいい」



「いや、ですが、百子が……」



「百子さんにはたくさんの手切れ金を渡して、別れてもらえばいい」





 俺は一瞬訳が分からなかった。

 目の前のじいさんは何を言っているのか。



 百子と子供たちと離婚して伊達百合子と結婚しろと? 本気か?



 こんなことをしていいはずがあるまい。


 年のせいで父親は頭がおかしくなっているのかもしれない。


 そう思いながら解せぬ思いを引きずり俺は即答を避けその日帰路についた。





          ◇ ◇ ◇ ◇





『こんな理不尽なことをしていいはずがない』


 その思いは消えないものの時間が経つにつれ気持ちに変化が出てきた。



 会社を引き継ぐという実感が大きくなるにつけ

『こんな理不尽なことをしていいはずがない』


という気持ちの比重が小さくなっていくのを俺は感じた。





 会社を大きくして莫大な利益を得る、富を得たいという気持ちが膨らむのを

止められなくなっていき、妻と子らに対する気持との均衡が破れ、欲の方が

大きくなった日に俺は百子に別れを告げることを決心した。



         ――――――――――――――――



 これまで全ての収入を妻の百子にもガラス張りにし、家計を自由に任せてきた。

そのように金に対して鷹揚だった伸之が、はたとここにきて会社という桁の違う器を

見せられたことで変なスイッチが入ってしまったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ