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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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 沸々とした心持ちでやり過ごす毎日。


 結論が出せないまま月を跨いでしまい、 気持ちばかりが焦るのだが

やはりどうするのが自分にとってベストなのか見えてこない。



 そんな中、意外なところから伊達とのことに決着をつけることになる朗報が

 もたらされることになった。



 秋の兆しが色濃くなった月に父親から話したいことがあるからと連絡が入り、 

伸之は日曜に実家へと足を向けた。




          ◇ ◇ ◇ ◇





「お父さん、今日はまたどんなことで……」


 仕事向きで何かありましたか、と伸之が尋ねる前に先に

父親からの発言があった。





「実はな、元気なのをいいことに所謂定年と言われる年から更に10年も

頑張ってきたが、最近身体の元気なうちに少しゆっくりしてもいいかなと

思うようになってな。


 近々お前に会社を譲ろうかと思っとる。


 今からだと来年の3月まで半年もの猶予があるから会社に対しても

ちゃんとした引継ぎもできるだろ。


 一応お前の気持ちを聞いておこうと思ってな」




 自分の後継者にと話しているのに息子の伸之は驚き、

次には浮かない顔をする。




 予想外の息子の様子に重治はどうしたことかと訝る。






「うれしくないようだな」


「いえ、そんなことは。急だったものですから……」


「何か……手放しで喜べない何かがあるのか?」




 なんでこうも、人生っていうヤツは一つが急展開すると次々変化が

押し寄せてくるのだ、全く。



 いつかは知れること、きっとこの場で白状しろと言うことなんだろうな、と 

 伸之は観念することにした。





 父親に現状のあらましを掻い摘んで話した。




 特に強調したのは百子や子供たちを捨てようなどと夢にも考えたことは

なく、それゆえ伊達百合子の妊娠にはどうすればいいのか結論が出せずに

途方に暮れているのだと心情を吐露した。



 恥ずかしく屈辱的ではあるが、この際しようがないと腹を括った。


 きっと酷く叱責され、跡継ぎの話は立ち消えになるだろう。




 それでも自分以外の、しかも一番知られたくない相手とはいえ、

知ってもらえたことで心は何故かほっとした。





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