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『愛のため、さよならと言おう』  作者: 設楽理沙


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13/117

12 ◇謀《はかりごと》

12 


 

 私と秋野さんは会社から徒歩数分の最寄り駅近くの『フランソワ』という

カフェに入った。


 入り口のドアが濃い色合いのブルーで壁はシースルーのガラス張りに

なっていて、一見小さな店舗に見える店。


 しかーし、中に入ると嘘のように結構広々としている。


 なんか、今日の石田さんみたいに込み入った話をするのにぴったし

なのよね。



 勿論(みんな)でわいわいやるのもよしって感じなんだけどね。


 テーブルと椅子が木でできていて暖かさを感じるそんな店。


 秋野さんと来るときは大体サンドイッチだとかケーキを頼むんだけど、

今日は秋野さん、石田さんと話をすることになるので、そんなもの頼んでもきっと喉に通らないと思うから、ここはお(ねい)さんが気を利かせて

あげるね。



「え~と、私お腹すいちゃったのでサンドにし……」


「あぁわわ、あの秋野さん?」


「はい?」


「実はここの後、友だちから教えてもらった素敵なバーへ行こうかなって

思ってるの。だから軽食はあとにしない?」


「わぁ~、素敵。分かりました。

 黒田さんと飲みに行くなんて初めてですよね。

 あ~ん、これが最初で最後になるかも」



「何々、意味深なこと言うねー」


「あぁ、実は私……」


 入り口を見るとちょうど石田さんの姿が見えた。

 間に合ったようだ。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 私はわざとらしく

「石田さん! すごい偶然ですね。ご一緒しません?」

と大きな声で石田さんに向けて声を掛けた。



 秋野さんを見ると青ざめている。


 石田さんと何かあった?

 だから辞表を出した?


 いきなりそんな考えが次々思い浮かんだけれど、とにかく目の前の

ミッションをこなさないとね。



「おじゃましてもいいのかなぁ~」

と、しらっと言いつつ石田さんが秋野さんの横に座った。


 私はややお尻の位置を二人の間くらいにずらして会話した。


 何か妙な感じ。


 石田さんと秋野さんの表情が丸分かりなんだもの。

 秋野さんは愛想笑いをしつつも、迷惑そうなのが見て取れた。


 ここで私が彼女を置き去りにして席を立てば、泣いて縋ってきそうな雰囲気だ。


 そう考えていると、思っていた以上の早急さで石田さんから『帰っていいよ』という合図が飛んできた。


 いや、視線を受けただけなんだけど、分かったのよ。



「秋野さん、私、ごめん。急にお腹痛くなってきちゃって……

申し訳ないけど帰るね」



「えーっ! いやそんな……。

 じゃあ私、駅まででも見送ります」





 


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