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◇楽しみな未来に向けて



 伸之が今しがた、帰って行った。


 子供たちが自分たちの離婚のことをどんな風に思っていたのか、

ずっと気に掛かっていた。



 当初元夫への恨み辛みがなかったといえば嘘になる。


 けれどその暗く傷ついた気持ちは小説を書くことに向け、失くしたとまでは

言わないが抜いていったという感じだろうか。


 自分自身の気持ちと向き合い戦うだけでいっぱいいっぱいだったのだが、

決めていたことがひとつだけ明確にあった。



 それは元夫や義両親に対する悪口を娘や息子たちには言わないでいること。  

 正直にいうと、何度も負けそうになり口から出そうになったことがある。


 けれど小説を書いて山下さんからコミカライズの話があったり、おまけに

映画化という話まであり、大きなサプライズに随分と助けられたような気が

する。



 今日の茜や淳平の言動を見ていて、自分の誓いを守れて

良かったなと心から思えた。



 もしかすると今日元夫に会ったのが私たちにとって

最後になるかもしれない。



 最後の晩餐じゃないけれど、父親と娘たちが穏やかに

親子の会話ができたことは幸いだと思う。



 そして今日伸之が尋ねてきたことは大きな意味があったように思えた。

 これで本当に一区切りついたのだと思った。



 さぁ、これから私たち家族は幸せに生きるのだ、というように

百子は胸の奥から生きることに対し漲るものを強く感じた。



「茜、淳平、お疲れ様。そしてありがとう」


「「お母さん……」」



「茜、今付き合ってる徹さんとは結婚までいきそう?」


「うん、私、彼と万が一駄目になったら一生結婚しないと思うもん」


お姉(おねぇ)すっかり徹さんに気持ち持っていかれてるね」


「そうだよー。学生時代に巡り会えてラッキーだったと思うわ」


「なんでよ? そこは別に就職してからでもいいんじゃね」



「うんそうだね、悪くはないと思うけど学生時代にしか見られない

彼の本質みたいなものとかあると思うんだ。


 もし就職してからの出会いだと今の彼の姿は見られなかったかも

しれないじゃない? 繕った姿で出会うみたいな? 


 上手く言えないけど、私は今の彼を好きになったから

よけいそう思っちゃうのよ。


 社会人の彼と出会うとして、もしかすると交際してたかどうか。

 彼が別の女性を好きになる可能性もあるしね」


「ようは、今ものすごぉ~く、愛があるのなって話?」


「そだよー」



「「ごちそうさっま」」

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