3話
よろしくお願いします。
私の異世界での暮らしは容易なものではなかった。魔王討伐という大仕事があったのだから、そんなの当たり前だと人は思うだろう。だが、私にはそれ以上の問題があったのだ。大問題とは私を取り巻く人間関係である。
転生した私の育ての親兼魔法の師匠が勇者一行に着いて行く私に猛反対して一悶着あり、他にも同じ年頃のおっさんどもが私の行く手を阻んだ。
「そういえば、あのハイノ先生って山田先生に似ているんだよな。」
私は電車の中でふとハイノ先生の事を思い出した。高身長で整った顔立ちと暴君と言っても過言ではない性格、まさしく山田先生そのものだった。
「変に面倒見がいいところも瓜二つなんだよな。」
私はそんな事を考えながら駅に着くと約束の場所へ向かった。
約束した場所に行くと既に相手はそこにいて、私の姿に気付くと大きく手を振った。
「安藤先生早いですね。」
「りっちゃんとのデートだから、楽しみ過ぎて1時間前に来ちゃった。」
安藤先生はそう笑うと私の手を繋いだ。
安藤先生は私の主治医で、子供の頃からお世話になっている恩人だ。年は還暦を過ぎているはずなのにとても若々しく山田先生よりも若く見える。
私達は楽しく会話しながらホテルに着くと最上階の個室に通された。
「りっちゃんとお出かけ出来る日が来るなんて夢にも思わなかった。今日の服可愛いね。」
「ありがとうございます。先生もかっこいいです。」
「嬉しいな。りっちゃんにそう言ってもらえるなんて思わなかった。」
安藤先生はウィンクをして私に言った。
間も無く、アフタヌーンティーの食事とお茶が来ると私達の話は更に盛り上がった。
「りっちゃんが来てくれて良かったよ。僕1人じゃこういうところ来づらくてさ。」
「私もここ来てみたかったのですごく嬉しいです。でも、私で良かったんですか。もっと可愛い子と来た方が良かったんじゃないですか。」
「りっちゃんと一緒に来たかったの。僕みたいなじいさんに付き合ってくれる人間なんていないよ。」
安藤先生は香りのいいアッサムティーを飲んだ。
「ねぇ、りっちゃんは他にどんな所が好きなの。もっとりっちゃんの事知りたいな。」
「私は基本美味しいものを食べるのが好きですね。後はお酒ですかね。」
「ワインは飲める?」
「飲めますよ。」
私は基本どんなお酒でも美味しく飲んでしまう酒豪だ。ワインだろうと何だろうとボトル一本飲んでしまうだろう。
「ならさ、いいフレンチあるから行こうよ。来週の金曜日の夜、僕りっちゃんの職場に迎えに行くよ。」
「そんな今日もご馳走になっているのに悪いですよ。」
「いいのいいの。僕がりっちゃんを連れて行きたいんだ。それとも、りっちゃんは僕といるの嫌?」
「そんな事ないです。」
私はしゅんとしてしまった安藤先生に慌てて弁解する。
「ありがとう。また楽しい事増えて嬉しいな。今から待ち遠しいや。」
私は周りにお花畑のビジョンが見える安藤先生を見ながら、ある人物と重ねていた。
その人物は私が異世界転生した時に安藤先生にくりそつな人と出会っていた。その人はカレル先生という魔物大好きなお医者さんで勇者一行の旅で訪れた街の大病院の院長だった。また、安藤先生同様笑顔の可愛い人であった。
「りっちゃん考え事しているみたいだけど、どうしたの。」
「いや、何でもありません。」
「今日は僕とのデートなんだから、僕以外の事を考えないで欲しいな。」
カレル先生も今の安藤先生みたいにデートと称して私をレストランやカフェに連れて行ってくれていた。私も美味しいものを食べさせてくれる事を喜んでホイホイついて行ってしまい、カレル先生のいる街を立つという2日前にプロポーズされた。理由を聞くと魔物を怖がらず仲良くしている所に惹かれたのだと言う。無論私は丁重にお断りしてその場をさったのだが、カレル先生は私の行く所に待ち伏せして私が首を縦に振らせようとした。しまいには街の権力者に働きかけて私達を街から出さないようにしてしまったので、私達は夜逃げのように裏ルートを使って街を出たのだ。
「りっちゃんのむすっとした顔も可愛いね。」
安藤先生は私の頬を叩くと笑って言った。
「でも、そんなに気がかりな事なら僕に相談して。ここなら誰に聞かれる事もないし、僕も誰かに話さないから。」
「大丈夫です。大した事じゃありませんから。」
私は心配そうにしている安藤先生を笑って言いながら、カレル先生の時も自分の身の上話を話して色々取り入れられたなと思い返した。