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21話

よろしくお願いします。

 あのボブカットの黒髪と細く背の高い黒ジャケット姿を私は間違える筈がなかった。


「見つけた。」


節さんは私の腕を掴むと血走った目で言った。


「おい、なんだもやし野郎。」


「りえちゃんを離せ。このストーカー野郎。」


2人は私を挟んで睨みを利かせて周囲をざわめかせる。


「雅美さんから名古屋にいると聞いて来てみたら、何してやがる。」


「私達はこれから愛を育む所だ。とっとと失せろ。」


「それはこっちのセリフだ。りえちゃんをさんざっぱら連れ回して傷付けておいて。」


節さんは山田先生を睨んで言った。


「理恵子の家族丸め込んで外堀無くしてからじゃないと理恵子にアタック出来ない小心者の言葉なんて届かないな。理恵子と私は前世から繋がっているんだ、お前みたいな蝿もどきが前世のやつとは訳が違う。」


「僕はずっとりえちゃんを見守ってきた。小さい頃からずっと知っている。あんたみたいにパッと出で無理矢理自分のものにしようとする男とは訳が違う。」


「重要なのは過ごしてきた時間ではなく、どれだけ親密で濃密な時間を過ごせたかだ。お前みたいに青臭い事を言う童貞野郎には分からないだろうがな。」


流石に年の功と言うべきか山田先生の方が口が上手い。節さんは青筋を立てながら山田先生に翻弄されている。


「私と理恵子は共にベッドで一夜を共にした仲だ。ここまで言えば流石のお前も分かるだろう。」


「は?」


「行くぞ。これ以上は時間の無駄だ。」


山田先生は勝ち誇ったように言うとエレベーターのボタンを押した。


「今夜は存分にお前を可愛がってやるからな。覚悟しておけよ。」


山田先生は節さんに見せつけるように言って来たエレベーターに乗り込もうとすると節さんも一緒に乗り込んできた。


「僕もりえちゃんを一緒に寝た。」


「それは子供の頃の話だろう。」


「僕はりえちゃんと同じベッドで互いの肌の温もりを感じながら一昨日寝た。」


節さんは私を無理矢理山田先生から引き剥がすと胸の中に仕舞い込む。


「りえちゃんの肌は白くて柔くって、服を脱がすのがプレゼントの包み紙を開けるみたいでゾクゾクした。髪もとっても良い匂いがして。」


「童貞野郎。私の理恵子を離せ。」


「りえちゃんはあんたのじゃない。僕らは既に入籍していて来週顔合わせも約束してるんだ。」


「入籍?」


私はあの婚姻届を節さんが出して戸籍を変えた事に青ざめていく。


「嘘をつくな。お前は童貞な上に妄想癖があるのか。一度医者でも行ったらどうだ。」


「医者に行った方がいいのはあんたの方だろう。いい加減にしないと警察呼ぶぞ。僕はすこぶる機嫌が悪い。」


節さんは止まった扉の開いたエレベーターから思考停止した山田先生を追い出すと扉を閉めた。


「あの野郎。帰ったら訴えてやる。」


「あの、節さん。入籍したっていうのは一体。」


「市役所に行った時に婚姻届を出してきたの。別にいつ出しても問題ないでしょ。」


節さんは私の顔を見て言った。


「それよりもあいつ話本当なの?あいつと同じベッドで寝たの?」


「成り行きで。」


「りえちゃんってそんな尻軽だったの?僕がいるのに。」


節さんの怒りのボルテージはマックスに上がりつつあり、今回ばかりは逃げられそうにない。


「話はホテルで聞くから。またどこかに行くなよ。」


節さんはエレベーターから降りると私の腕を引いてホテルから出るとタクシーで別のホテルへ連れて行く。


 節さんが連れて来たホテルもかなり良さげなホテルで周囲の空気を凍りつかせながらロビーを歩く。


「よそ見するな。」


節さんは逃げ道を探す私に睨みを利かせながらフロントでもらったカードキーを片手に言った。


「僕のりえちゃんなのに、僕だけのりえちゃんなのに。」


節さんは呪詛のようにぶつぶつと呟き、部屋へと行く。


 部屋に着くとチェーンまでかけて節さんは私をソファへ座らせる。


「あの男とどこまでいったの?あの勘違いストーカー野郎に体を許したの?」


「そんな訳ないじゃないですか。酔っ払って一緒に寝ちゃったんです。」


「あんなやつと酒飲んだ挙句にホテルに泊まって一緒に寝たの。信じられない、りえちゃんには見境がないの?りえちゃんはエサがあればホイホイ捕まっちゃう動物と同じ嗜好なの?」


節さんはボロクソに私をなじるとソファに押し倒した。


「りえちゃんは僕が全部管理しないとダメな子だったんだね。これからは全部僕がりえちゃんをみてあげる。全部全部、僕に身を任せてくれればいい。」


「やめて下さい。私は山田先生とも節さんとも一緒になるつもりはありません。」


「じゃあ、あの叔父とは一緒になるつもりはあるんだ。僕もりえちゃんに欲しい物なんでも買ってあげられるよ。旅行だってたくさん行かせてあげられる。」


節さんは唾を飛ばしながら私に叫んだ。

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