18話
よろしくお願いします。
和也おじさんに連れられて買い出しに来たら早速、おじさんは婦人服売り場で私の服を見繕い始めた。
「理恵子さん、こちらを着てみて下さい。」
おじさんは値段なんて見ずに私に上下の服を手渡して試着室へ押し込んだ。
「早く見せて下さいね。」
私は急かすおじさんにされるがままに服を着て、着替えての繰り返しをした。
「理恵子さんには何でも似合いますね。もうここにあるもの全部買ってしまいましょうか。」
「お願いですからやめてください。」
「冗談ですよ。」
和也おじさんはそう言いながら試着していない服も数着購入していた。
「次行きましょうか。」
和也おじさんは大きな紙袋を持つと私を従えて次の店へ行ってしまった。
他の店でもおじさんはセレブ顔負けの大人買いを行った。周囲の客をドン引きさせながらの買い物はいつとながら小っ恥ずかしいものである。荷物もおじさんが全て持って行動するので私はどこかのお嬢様か何かなのかとひそひそと囁かれる。
「いけません。私が持つので理恵子さんは何もしなくていいのです。」
いたたまれない私は和也おじさんの荷物を持とうとするだけで拒否されるのでお嬢様と執事感が一層強くさせる。私とおじさんは建物内の全てのお店を網羅すると締めとしてロリータ服の店に入って行った。キラキラして乙女丸出しのフリフリ服はどう考えても三十路女に不釣り合いである。ロリータ大好きなら話は別だが、私は興味のきょの字すらないのだ。だが、おじさんは服を見て頷いたと思った私に桁が7つあるマリーアントワネットでも着てそうな服を着てくるように指示を出す。
「ずっと思っていたのですが、理恵子さんはこういう服も似合うと思うのです。」
「流石にこの服は勘弁して下さい。私にこういう服は。」
「着て下さい。」
もはやおじさんの口調は明らかな命令で私は仕方なく店員さんに手伝ってもらいながらフリフリのフリフリドレスを赤っ恥をかきながら着た。
「思った通りですね。お嬢さん、そこの服全部下さい。」
和也おじさんは1着4桁する服を10数着購入して店の1区域を不毛の地と変えた。
「お支払いはどうされますか?」
「一括でお願いします。」
おじさんはブラックカードを出して店員さんに渡すとサラサラと暗証番号を押して買い物を終えた。
車に買った服全てを詰め込むとおじさんは後部座席の扉を閉めて運転席に乗った。
「次は理恵子さんの化粧品を見繕わなくてはいけませんね。私は流行りには疎いですが、どういうものを購入するべきか予習を行なって来たので何とかなるでしょう。」
「おじさん、もうこれ以上はお腹いっぱいです。こんなに服を買ってもらった上に化粧品まで受け取れません。」
「私は理恵子さんに尽くすのが何よりの娯楽なのです。理恵子さんも気にせずに楽しんで下さい。」
和也おじさんは自分がいい事をしている気分なのか鼻歌混じりに言うと車を走らせて御用達のデパートへ向かった。
化粧品やバッグ、どれも私の半年分の給料分を使ったものの次に来た宝飾品店でおじさんはダイヤのネックレスを私の首に付けた。
「このデザインならどの服にも似合いますね。」
ちらっと見たそのネックレスの値段は私の働いた給料分に相当する額だった。
「おじさん、今度こそ本当に受け取れません。こんなの母に知られたら間違いなくどやされます。」
「心配いりません。私がやりたくってやっているのです。どこに非難される要素がありますか。」
「ありありです。こんな高価なもの受け取っても困ります。もしも無くしてしまったらと考えると耐えられません。」
私は安藤先生に買ってもらったネックレスを無くしてしまった事を思い出して言った。
「その時はその時です。それに理恵子さんがものを粗末に扱うなど考えられません。きっと大切にしてくれます。」
おじさんは再びあのブラックカードを出すと一括支払いで会計を済ませて次は靴だと2階へと上がった。
靴を30足も買い一体今日だけでいくら使ったんだと思うくらい散財した和也おじさんは私と特別食堂と名の付くレストランで食事を取った。
「我ながら少し買い過ぎてしまいましたね。」
和也おじさんはまた増えた紙袋の山を見て言った。
「ですが、理恵子さんが私の選んだ服を着たのを想像するとそれだけで止まらなくなるので仕方がありません。理恵子さん、明日からとても楽しみですね。」
おじさんは注文したうなぎを食べながら言った。
「あの、おじさん。私、いつまでこの服を着ていればいいんですか。」
ピンクのふわふわブラウスとジャンパースカートを履き、頭部にはヘッドドレスを着けた私は嫌そうに言った。
「とても可愛らしいですよ。それにしてもその服はとても似合いますね。色違いも買うべきでした。食事を終えたら食料品売り場でビーフシチューの材料を買いましょう。」
おじさんは肝吸いを口に付けるとうなぎを食べる私に優しく微笑んだ。




