17話
よろしくお願いします。
ふかふかのベッドでよく寝た私は和也おじさんの作った和の朝食に舌鼓を打つ。
「理恵子さんは私の作った食事を美味しそうに食べてくれるので作りでがあります。」
「お世話になっているのにすいません。」
「謝らないで下さい。私は好きでやっているのです。」
和也おじさんは味噌汁のおかわりをよそってくれて言った。
「姉の方には理恵子さんの状況を詳しくお話ししました。信じられない様子でしたが、私の所にいる事だけはどうにか納得してもらえました。」
「ご迷惑をおかけしてすいません。」
「謝らないで下さい。今日は理恵子さんの日用品の買い出しに行きましょう。そんな荷物じゃ何かと不便ですからね。」
「そこまでしてもらわなくても大丈夫です。おじさんにはそこまで迷惑をかける訳にはいきません。」
「私はあなたの叔父です。我が子同然の理恵子さんが苦しんでいるのに見捨てられるものですか。心配なさらないで下さい。私が理恵子さんをお守りします。」
和也おじさんは何故かとても含みのあるような口調で私に言うとお茶を淹れ出した。
食事の片付けを手伝いながら私はここでもひどいデジャブに襲われていた。この誰に対しても丁寧な口調、優しそうであるものの自分の意見を是が非でも突き通そうとする姿勢は魔王とそっくりだった。私が転生して出会った魔王は本当に物腰柔らかでどこかの執事かと思ってしまうくらいだった。出会いもこれまた特殊で、魔王とは妖精の森を出た直後に出会っていた。妖精達の力を借りて魔王城に向かおうとする直後、魔王軍幹部の妨害により事もあろうか魔王城に私だけ飛ばされたのだ。
「おや、どちら様ですか。」
庭仕事をしていた初老の紳士はいきなりやって来た私に親切にしてくれた。見た目も人間とよく似ていたので、初対面で魔王と見抜く事が出来なかった。それから、私は魔王の庭仕事を手伝い生活してすっかり仲良くなってしまった。私自身、どこか心地よくてこのままでもいいかと思ってしまったくらいである。
「リリアさんはとても素敵な方ですね。」
魔王自身も私の事をえらく気に入ってくれてこのまま住まないかと言ってきたくらいだ。だが、私には仲間がいるので断ると魔王は少し考えていつもの優しい顔に戻って私に爆弾を投下した。
「大丈夫です。彼らは今頃、私の部下達によって皆殺しにされている事でしょう。」
この言葉を聞きようやく私は彼が魔王だと分かった。私はまずいと思い逃げ出そうとするものの相手は魔王である。全く歯が立たない。
「とても可愛らしい事をされますね。」
魔王は猫と戯れてるかのように私の攻撃を受けて笑う。また、魔王は私が転生して来た事を知った上でここに寄越したらしく私をペットか何かと思っているようだった。
「異世界からの人間と聞いて会ってみると思いの外、私はあなたを好ましく思ってしまいました。部下達は世界征服を目論んでいるようですが、私はここでリリアさんと過ごす時間が好きです。ここでずっと私と暮らしましょう。」
話を聞いて更に驚いた事に魔王はそもそも世界をて 手に入れる事に興味がないようで、下の連中が勝手にやっていてそれを黙認しているだけだという。
「望むなら彼らを止める事私には出来ます。まぁ、リリアさんがいい子にしていたらの話ですが。」
魔王は私が大人しくしていれば世界征服をやめてくれるという好条件を出して来た。実際、彼と生活をしていてそれが嘘ではない事も分かっていたのでそれでもいいなと思っているとタイミングよく勇者達が来て紆余曲折あり魔王を倒してなんだかんだハッピーエンドになったのであった。
「楽しみですね。何を買いましょうか。」
「あんまり気にしないで本当に大丈夫です。」
「何を言いますか。私にとって理恵子さんとの時間が何よりも尊いのです。2人でたくさんの思い出を作りましょう。」
和也おじさんのこの大袈裟とも言える言葉も魔王と重なる部分があるのだ。一体私の周りの男性陣は一体どうなっているのかと神様にでも問いたくなる。
「どこに行きましょうか。アウトレットもいいですし、駅前の新しいデパートもいいですね。」
「あの、おじさん。」
「どうされましたか。」
「私、そんなに服いりませんしもらいすぎても困ります。」
和也おじさんは事あるごとに私に服やらアクセサリーをプレゼントしてくれるので部屋のクローゼットはいっぱいになるし、母からも苦言を言われる。だが、和也おじさんはめげずに私に買い与えてくれるのでいつと2人でため息をつくのがセットになっていた。
「理恵子さんもそろそろ、ちゃんとしたネックレスをひとつぐらい持っておいた方がいいですね。せっかくですので、一緒に選びましょう。」
「お気持ちだけで結構です。」
私はこれ以上和也おじさんに物をもらったら帰った後の私の部屋は完全な物置になってしまうので必死に抵抗した。




