15話
よろしくお願いします。
節さんの衝撃ワードに私の転生時代の思い出がフラッシュバックした。それは魔王城近くの精霊の森で出会った妖精の王子であるカノンである。カノンは節さんに瓜二つの容姿で性格も掴みどころがなかった。
「リリア、好き。」
カノン王子は私に会うなりそう言って来た。おまけに自己紹介もしていないのにそう言って来たので私やそれを聞いていた勇者一行はドン引きのドン引きである。彼の話を聞くと私はおぎゃあと生まれたその時点で見初められてしまっており、ずっと見守って来たのだという。その為、私の事なら何でも知っていて親にすら言った事のない事も知っていた。カノン王子は正真正銘の私のストーカーで私をこの森に迎えるのを心待ちにしていたようで私が来た事に喜びを隠せないようであった。
「ここ、リリアと僕の新居だよ。」
カノン王子は節さん同様に建築家のようで妖精の城に建てた離れを私に嬉しそうに案内していた。ただ、私達が妖精の森に来たのも彼らの力を必要としていたからであったので、そこは都合よく利用して約束を取り付ける事が出来たのでプラマイゼロで私達は無理矢理思う事にした。
出発の日、私達は気を引き締めて森を出ようするとカノン王子が私達の前に立ちはだかった。
「僕らが力を貸すんだから、リリアは必要ないでしょ。」
カノン王子はどんな説得しても私を置いてけの一点張りだった。最終的に魔王を倒した暁には必ずここに戻るという条件で飲んでくれて魔王を倒しに森へ出たのだ。だが、その約束が果たされる前に私はこの世界に戻って来て今に至る。
「行こうか。」
節さんは私の持っていた荷物を元の場所に戻すと私の手を引いて部屋から出た。
節さんのエスコートは山田先生の女性慣れしたものと違う意味で完璧だった。どこにも逃げる隙がなく私の行動を見透かしたように先手を打つのだ。
「あの、節さん。」
「どうしたの?」
「どうして付いてくるんですか。私、お手洗いに行きたいだけなんですけど。」
「ここのトイレ、分かりにくいなら一緒に行こう。」
節さんはとにかく私から離れようとせず、自然と距離を置こうとするだけでも「どこいくの?」と腰を掴まれてしまう。
「りえちゃんは自覚ないの?りえちゃんは他の男に狙われてる。僕のりえちゃんだって、奴らに知らしめておかないと。」
「奴ら?」
「りえちゃんはずっと狙われてる。前と一緒だ。」
「前?」
私は節さんの言っている意味が分からず聞き返す。
「育ての親も町医者も魔王も全部全部僕の邪魔をするんだ。君だって、迷惑だったろうリリア。僕はカノンだ。リリア、僕は君を会うために生まれ変わったんだ。」
節さんは頭が混乱している私に更に混乱を招く事を言った。
「僕らは運命なんだ。生まれた時からずっと知ってるし、りえちゃん以外の人間に興味なんて持てない。」
「そんな事言われても。」
「ねぇ、りえちゃん。僕ね、人間になっても全く変わらないんだ。妖精は一度好きな人が出来るとその人の事しか愛せない。今の僕はそう、ずっとずっとりえちゃん事しか好きじゃないんだ。」
節さんは私の肩を掴み、顔を近づける。
「りえちゃん、責任を取ってよ。僕を受け入れてくれたら、りえちゃんをちゃんと幸せにする。それに他の連中から守ってあげられる。」
「めちゃくちゃな事言わないで下さい。」
「どうしてそんな事言うの?何ならこれから役所に行って籍を入れに行こうか。そうすればりえちゃんも考え変わるでしょ。」
節さんはそう言うと図書館を出て大通りのタクシーに私を押し込んだ。
「今日って何の日かりえちゃん分かる?今日はね、りえちゃんが僕に初めてプロポーズした日だよ。」
「出して下さい。私、節さんの事そんな風に見てません。」
「大丈夫。すぐに前みたいに僕の事好きになる。実はりえちゃんのお母さんにもうちの母にも話を通してあるんだ。今更それを無かった事にするのはないでしょ。」
節さんは反論を許さずひたすらに私を説得し始める。
「りえちゃんのお母さん、そろそろ孫の姿が見たいって言っていたし早いのに越した事はないでしょ。僕、それなりに稼いでるし子供3人ぐらい出来ても大学まで全員行かせられるよ。」
「本当にやめて下さい。私、節さんと結婚する気なんて全然ありません。」
「だめ。りえちゃんは僕のお嫁さんになるの。もううちの離れに家建てる事になってるんだ。」
「知りませんよ。」
「指輪も全部用意してあるんだよ。りえちゃんが僕にくれたたんぽぽの花冠をイメージして作らせたんだけど、気に入ってくれると嬉しいな。」
節さんは全く私の話を聞く気が全くないようで自分の言いたい事だけを話していく。
「りえちゃんと一緒になれて僕、幸せ。今日の夜、いいかな。りえちゃんに僕の初めてもらって欲しい。」
初恋の人は白い肌を赤らめて私の手を重ねると照れ臭そうに言った。




