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14話

よろしくお願いします。

 節さんが起きたのは昼過ぎの事だった。その間私は節さんから離れる事を許されず抱き枕として役目を全うした。


「りえちゃん、おはよう。」


節さんは私を飼い猫か何かと勘違いしているのか頭を撫でたり髪の匂いを嗅いだりする。


「お腹空いてる?」


「少しは。」


「外の喫茶店で軽く何か食べてどっか行こうか。」


節さんは既に疲れ果てている私に言うとじっと私を見つめ始める。


「どうしましたか?」


「りえちゃん、可愛いなって。」


「はい?」


「このまま食べちゃってもいい?」


節さんはそう言う顔を近づけてキス出来そうなくらいの距離に迫る。


「節さん、本当冗談やめてください。」


「冗談じゃないよ。僕、りえちゃんの事好きだから。」


節さんはこつんと私の額と重ねて言った。


「りえちゃんはどう?」


「私は。」


思わずそうですと答えてしまいそうな空気に流されるのはまずいので、「トイレに行かせて下さい」と答えた。


 トイレから戻り、ベッドルームに戻ると節さんはベッドの上からじっと私を見ていた。


「りえちゃん、シャワー使う?」


「えっと。出来れば。」


「先に入っていいよ。」


節さんはそう言うとベッドサイドのスマホを手に取って見始めた。


 何となく節さんから「帰るな」という空気が放たれていて、帰れなかったので私はシャワーを浴びて持って来た服に着替えてた。


「りえちゃん、今日も可愛い。」


節さんはスマホで私の写真を撮りながら言った。


「ちょっと、やめて下さい。」


「どうして?雅美さんりえちゃんの事心配してたから現状報告だよ。」


節さんはスマホを置くとベッドから降りて落ちていたジャケットやズボンを取るとシャワー室へ行ってしまった。


 残された私は荷物をまとめて節さんが出てくるまでに部屋を出ようとしていると私のスマホが震え出す。相手を見ると母親で思わずいつもの癖で出てしまった。


「どうしたの?」


「どうしたのじゃないわよ。あんた、どうしてこの事言ってくれなかったの?」


「この事?」


「昨日から節ちゃん、理恵子の写真を頻繁に送ってくるのよ。メッセージも惚気だし、びっくりしちゃった。いつから付き合ってたのよ。知ってたら先生と結婚うんぬんの話をしていなかったのに。」


母の話を詳しく聞くと節さんは私がレストランで食事をしていた時から頻繁に写真を送っていたらしく、タクシーで私が節さんの肩にもたれかかっていた写真を見て確信を持ったらしい。


「節ちゃんに愛想尽かされるような事するんじゃないよ。高身長、高学歴、高収入きちんと揃った男なんてそうそういないんだから。」


「違うよ。節さんとそんな関係じゃないって。」


「どうしたの?」


シャワーを浴びて来た節さんがいつの間にか私の後ろに立って言った。


「あら、節ちゃん。昨日はうちのバカ娘をありがとね。」


「こちらこそ、りえちゃんのおかげでとても楽しい時間を過ごせました。」


「何かあればすぐに言ってね。ちゃんと言っておくから。あと、私の事はもう1人のお母さんだと思っていいからね。」


母は完全に調子に乗って節さんに言った。節さんも満更でもない様子で対応して、最終的に節さんは母の事を「おかあさん」と呼んでいた。


「また日を改めてご挨拶に伺います。明後日まで、りえちゃんをお預かりします。」


「明後日とは言わずにずっとお預かりしてていいのよ。節ちゃんが息子になるなんてとっても嬉しい。京都楽しんでね。」


母はそう言うと電話を切り、プープーという音がスマホから聞こえてる。


「嬉しいな。りえちゃんのお母さんに認めてもらえた。」


「あの、節さんこれはどういう事ですか。」


「僕とりえちゃんの仲が認められたんだよ。僕らずっと両思いだったじゃない。」


「はい?」


私は母からの電話に出ないでさっさと出て行くべきだったと心の底から後悔していた。


「りえちゃんが誰とも付き合っていないのって僕の事が好きだったからでしょ。僕嬉しい。」


「何言ってるんですか。」


「僕ね、ずっとりえちゃんの事が大好きだったんだ。5歳の時にプロポースしてくれたでしょ。だから、僕ちゃんと待ってたんだよ。」


頼むから冗談だと言ってくれ、私は初恋の人がこんなに頭がおかしいやつだとは思いたくなった。5歳の子供の戯言を真に受けて今の今まで待っているなんてこんな恐ろしい話はない。


「でもほら、節さんすごくモテるじゃないですか。私なんかよりも条件の良い女の人なんて山のようにいますよ。だから、こんな悪ふざけやめて下さい。」


「冗談なんか言ってないよ。僕はずっとりえちゃんが好きなんだ。それに僕、りえちゃんにしか勃たないし。」


私の初恋だったその人から聞いた下ネタがこんなにもドン引きするほどの威力を持っていようとは全く想像がつかなかった。


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