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第1話 抜け穴からの出会い

この世界の地下には、ダンジョンが広がっている。それはもう、地上では見られない色々な素材や魔物はいっぱいあるし、何しろまだ50%以上も前人未到の地が残ってるんだとか。

それに、ダンジョンがあるから今まで先人たちも面白い人生を送ってきたし、英雄譚も生まれた。

まあ、ダンジョンの外にも魔物はいるけど、そっちは同じ種でもダンジョンの中で出るのに比べて格段に弱い。

更に、ちょうど今が“大冒険者時代”と呼べるほど各地で冒険が白熱してる。特に、一番大きくて一番危ないって言われてる世界最大のダンジョン、テオ。

西方の国レティシアにあるそのダンジョンは、一番大きいわりに一番開拓が進んでる。

どうしてかって?それはまあ、<六道>って呼ばれる6人の最強冒険者がいるからだよ。

それぞれに、<天道>、<人間道>、<修羅道>、<畜生道>、<餓鬼道>、<地獄道>って呼ばれてたっけ?

なんと、今ちょうどソイツらが全員揃って行方不明なんだ!しかも、失踪する前に全員が観測された場所は例のテオ。

で、冒険者ギルドは<六道>がいないと冒険者たちの士気が下がるやら<六道>に頼り過ぎてる連中が危ないやらで焦って全世界向けにこんな緊急クエストを要請した。

〘消えた<六道>を取り戻せ〙。

それからもう3か月経つけど、手掛かりの1つもありゃしない。

まあ、全員生存は保証されてるらしいが。

さて、この先どうなるでしょうかねぇ。



まだ冒険者になってから20日経つか経たないかの、駆け出し冒険者の僕、テーラ・セゼムは戦慄していた。

ランクEである僕はまだ3階層までしか行くことを許されていない。それに、ここまでの深層に来るとは思っていなかった。

深層、とは言っても21階層だが、ここでリナさんの妹さんが死んで、リナさんも右半身を失った。

ここは危険な場所だ。

レッドドラゴン、ヴォールァベアー、ピーターパン。Bクラスが入っていい場所にはなっているけど、出現するモンスターの殆どが推奨ランクA以上だ。

リナさんから【抜け穴現象】のことは聞いていたけど、こんな深くまで来るつもりはなかった。

単純な好奇心、のつもりだったけど、それはこのダンジョンでは命取りみたいだ。

この20日近く、何も命に関わるようなことが起きなかった所為で気が緩んでたのは間違いない。

生きて帰れたら、次からは気をつけよう。

そして、どこからか大きな足音がこちらに向かってくるのが分かった。

その方向を向くと、レッドドラゴン。

実物を目の前で見ると、想像していたよりも数倍、いや、数十倍恐ろしかった。

生きて帰れ生きて帰れ生きて帰れ生きて帰れ生きて帰れ!!!!

こんなところで死んだら、リナさんをがっかりさせるだろ!

それに、妹さんと同じ場所で死んだなんてなったら、リナさんの心の古傷を抉ることになるかもしれないんだぞ、そしたら一生立ち直れないかもしれないんだぞ!

今は逃げることだけを考えろ!

…と思っていた矢先、レッドドラゴンが魔法をダンジョンの天井にぶっ放し、行き止まりになってしまった。

振り向けば、ドラゴンの厳つい形相は目と鼻の先だった。

戦うしかないのか?いやいや、ランクEの僕が推奨ランクA以上のレッドドラゴンなんか倒せるわけがない。

どうすれば…。

と、ふとドラゴンの首を見るとそこには首輪がしてあった。誰かの使い魔なのか。

僕は護身用の爆発するポーションの瓶を壁に叩き付け、ドラゴンの意識を僕から逸らした。

その隙をついてドラゴンの背中に飛び乗り、首輪に書いてある主人の名前を探す。

あった。

が、驚きのあまり、声すら出なかった。

このドラゴンは、<六道>の1人、<天道>にして、冒険者たちからその強さと美しさから絶大な人気を得ている美少女剣士、マナ・レゼトヴェートさんだ。

ここは、一か八かにかけてやってみるしかない。成功すれば一石二鳥だ。


「ドラゴン、マナさんのところまで直行だ!」


そう叫ぶと、ドラゴンもそれに負けじと爆音で咆哮し、自分で築いた瓦礫の山を突き破って走っていった。



僕の感覚が狂っていなければ、ここは32階層。

完全にミスった。冒険者ギルドの発表じゃ、ここは前人未到になっていた。

もうお仕舞いだ、助けが来るのはあと何年後か…。

でも、このドラゴンにはマナさんのところまで連れて行くように言って、ここで停まったってことはこの辺にいるはずだ。

俺がドラゴンから飛び降りると、ドラゴンが嬉しそうな唸り声を上げていた。

ドラゴンの顔を撫でる、1人の少女がいた。

間違いない、この人が正真正銘、<六道>の<天道>、マナ・レゼトヴェートさん。

噂に聞いてたよりも可愛らしい。いや、これを言ったらリナさんが嫉妬するかも。

それはともかく、最強の1人とは言えど何故マナさんだけでここにいるんだろうか。


「あ、あの、マナ・レゼトヴェートさんですよね?」

「そうだけど」


さて、まずは何から訊こうか。

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