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銀髪種族の狂人(女子高生)  作者: あかかかかkkk
1/1

【プロローグ】—おいしいミサイル—

感謝感謝。

 朝。私が最も弱体化する瞬間である。

 ずっと寝てたくてもそれを許さないのが太陽。消したい。消そうかな。カーテンから漏れる光が地味に明るくて寝れない。そしてもう一つ、私の睡眠を邪魔する物がある。


「朝よー」

 それがお母さん。休日なんだからもっと寝かせて欲しい。

「あと30時間」

「明日平日。絶対遅刻するわよ」

 何を隠そう、私は華の女子高生。青春を謳歌できる17歳。

「起きなさーい」

 それだけならまだ良かった。耳を塞ぐだけで済む話だから。あろう事か、お母さんは私の被っている毛布を剥ぎ取ってきた。

「卑怯者ー」

「9時にもなって起きないのが悪いわ。ほら、青春でも謳歌してきたら?」

「私の青春は寝る事だから」

「つべこべ言わず起きる」

「寒い…毛布頂戴」

「はぁ……」

 そう言うとお母さんはため息を残して毛布を持ったまま部屋を出て行ってしまった。

 毛布を剥ぎ取られた私は、ベッドで30分間、どうにか寒さを凌いで二度寝をキメようとしていた。具体的には、太ももで手を挟んだ。結果としてはただ悶々としただけだった。ちくしょう。


「あら。今日は早いのね」

「誰のせいだと思ってるの」

 お母さんは私より一回りも二回りも大きい。背とか。後、色々と。朝起きるとお母さんより大きくなってないかなーとかいつも思うけど、そんなことは無かった。悲しい。

 それと一つ、注視すべき点がある。『銀髪碧眼』。髪は白く眼は青い。それがお母さんだけ、と言うのは間違いでうちの種族は大体銀髪碧眼。勿論個人差はある。髪が灰色や紫の人もいれば、目が黄緑だとか赤色の人もいる。極め付けには、黒髪黒目の完全に人間にしか見えない人もいる。でも不思議な事に差別とかが起こる事は絶対に無い。

 うちの種族は、『ヘリエル』。大体、ヘリエル人と呼ばれる事が多い。

「卵焼き作ったから自分で切って食べてねー」

 キッチンには、皿に乗った卵焼きがででーんみたいな感じで置いてあった。私はまな板に卵焼きを乗せて、包丁を取り出して、慣れない包丁捌きで卵焼きを切る。これが内側までカッチカチの卵焼きだったら良かったのだけど、お母さんが作るのは中が半熟?でトロトロしているので如何せん切りにくい。そのくせオムレツ作ってって言うと毎回焦がす。

「ママ、パパの所行って来るねー」

 お父さんはこんな朝っぱらからコーヒーを飲みに行っている。私は断然カフェオレ派。苦いの無理。

「え?私一人?」

 手元から視線が逸れた。その結果がスパッと、じゃなくてちょっと刃先が掠って指先に血が滲んで済んだだけで本当に良かった。ちなみにヘリエルにもういくつか特徴があるっていうのは、今の内に言っとく。

(痛っ!)

 目が冴える。街行く人々の話し声もハッキリ聞こえる。血の鉄くさい匂いがする。

 生成される魔力が爆発的に増え、大きな魔力の炎となって体の外に放出される。

「あら。あの子また何かやらかしたのかしら」

 それは家の外からでも見えるレベルで。彼女の母親が溢した。

(やかましいわっ!)

 無論聞こえているのだが。

 そして切った拍子に痛みで力が入り、卵焼きに包丁の刃が入る。卵焼きを切った包丁がその勢いを落とす事は無く。

  バンッッ!!

 見事にまな板を真っ二つにした。ついでに人工大理石も割った。

「……あの子が何をしたのかは知らないけど、何か壊したのは確かね」

(その通りでございます……!)

 人工卵焼きと人工まな板の断面と割れた人工大理石を同時に見られる奇跡的瞬間。

 冷静になった私は改めてその光景を見て、冷静なのか冷静じゃないのか、その場で戦慄した。

(……やばっ)

 少なくともこのままだといけないのは明白。

「えーっと、【修復I(リペア)】」

 次の瞬間、真っ二つになっていたまな板と大理石が元通り。ついでに苦労して切った卵焼きも元通り。

(指の流血も止めないと。【回復I(レキュぺレーション)】)

 ヘリエルの特徴その2は、簡潔に表すなら『強化』。発動条件が『体の損傷』。もう少し詳しく言うと、自分の体の物理的な損傷度に伴って、その分自分が強化される。みたいな。これがヘリエルの大きな特徴。その強化項目は、身体能力、打たれ強さ、精神力、魔力、五感、発育などと言ったように、かなり多い。

 そして3つ目。『魔法が使用可能』。

 この世界において魔法が使える種族はそう少なくないから特別な事は特に無い。

 一部の人間、エルフ、吸血鬼、ドラゴン人種。パッと挙げるだけでも結構ある。

 魔法が発達した世界だと科学が進んでないイメージがあるけれど。うちは全然そんなことは無かった。

 魔法は、呪文に名前を付けたもので、体が呪文さえ覚えていれば名前を言うだけで使える。

 その4。『生き返る』。ゾンビの間違いにも思えるけどどうやら本当らしい。心臓で生成する大量の魔力を使って蘇生する、んじゃない……かな?

 これを聞くとなんかヤバい風に聞こえるけど。実際そんなじゃない。この国皆そうだし。


 朝食を食べて、朝やることが無くなって完全に暇になった私は何を血迷ったのか。

 パーカーを着て、靴を履いて。外に出掛けた。

 因みに朝はパン。卵焼きだぞそこはご飯だろって人が居るかも知れないけど。ハムエッグ作ったから大丈夫。で卵焼きは冷蔵庫に封印した。


 出掛ける(※ただの散歩)途中で公園が目に付いた。そうだ、日向ぼっこしよう。のノリで公園に入った。

 ジョギングしている人、犬を散歩している人、スポーツ系少年。お嬢様とその従者(メイド)。いろいろな人が来る公園で、案内板に目を向けると一際目を引く施設がある。それが『決闘場』。実際はただの広場。

 怪我の度合いで強化されるヘリエルならではの施設。決闘することでお互いを高め合い、更なる高みを目指す、そんなバーサーカーじみた考えがあって良いのか。公園を往来する人を見てみる。同性、特に男同士の友達だと、拳をぶつけて挨拶をするけど、問題はその拳の威力。何だよあれ。ただのパンチじゃんかよ。

 私はそんな痛覚が伴う面倒事が嫌いだ。第一、別に強くなる必要なんて無いと思う。

 前なんて、「お前小さいな」と真っ正面から言われたことがある。そん時は確かボコボコにした気がする。悪かったな平和主義者で。

 そんなことを考えてる内に歩き疲れて、何となくどこかに腰掛けようと思った。

 周りを見渡す。空いていた椅子は決闘場前の一か所のみだった。私はそこに腰掛け、日光を浴びた。あったかい。

「おいあそこの娘小っちゃくね」

「だな」

「めっちゃ刺さるな」

「それな」

「じゃあ、勝った方がナンパする権利を持つ、とか良くないか」

「それ良いな、天才」

 と言う会話がロリコン二人によってされていたのも知らずに。


 決闘場でバチバチやりあっているのを横目に私は日光を浴び、思考に耽った。

(それにしてもよくあんな風にやり合えるなー。私は痛いの嫌いなのに)

「【火槍(フレイムスピア)】!」

 何本もの炎の槍が空を飛び、その熱気に晒される。

(ありがたいけどこんなに暑いの要らない)

「【氷壁(アイシクルウォール)】!」

 その槍が命中する前に氷の壁を生成して、攻撃を無効化すると同時に、氷の波が相手を襲い、太陽を覆い隠す。

(何考えてるんだ冬だぞ。……うぅ、寒い)

「【タグ】:【破断剣(ブロードソード)】!」

 華麗に避けながら両手で幅広の剣を振り、迫り来る氷を破壊する。

 魔法には幾つか種類があり、その内の一つに『タグ』がある。これは名前が長かったり、自作の魔法の呪文に名前が無い時のあだ名みたいなもので、これで魔法を使うことができる。けど同時に魔法を二つ使っているからその分魔力を多く消費する。

 氷の破片が飛び散り、ただでさえ寒い冬が滅茶苦茶寒い。

(か、かき氷?)

 夏に激辛ラーメン食べたくなる理論。

「【タグ】:【精密刺突剣】!」

 現れたレイピアを操り、刃先で相手を狙って的確に突きを繰り出す。

「くっ……!」

 反撃を避けきれず、レイピアの先端が頬を掠める。

(まぁ間に合わんでしょうな―)

 圧倒的他人事。実際他人事。この後ナンパされることは除く。

「やってくれたな!」

 怪我が出来て、魔力の反応が大きくなる。

(うわ始まった)

 ここから決闘が激化するのは明白。でも動くのが面倒臭い。そもそも他に空いてる椅子無いし。

「上級魔法!」

 実はここは唱える必要はない。上級魔法という言葉を使いたいだけで、実際は省略できる。唱える時も英語じゃなくても良かったりする。

(飛んでこなければどうという事は無い、よね)

「【散開(スプレッド)誘導魔弾(マジックミサイル)】!」

 大量の魔力で出来たミサイルが宙に浮かぶ。

(うわお)

「じょ、上級魔法!?」

「さぁ、死んでもらおうか!」

「い、【即応(インスタント)防御(ガード)】!」

「魔力誘導方式!放てーっ!」

 放つの貴方自身なんですけど。

 腕を向けた方向に数え切れぬほどのミサイルが宙を舞う。

(魔力誘導方式って魔力がある方に飛んでいく奴だっけ)

 その為一般人が巻き込まれやすいという明確な欠点がある。

(ほら魔力の方に段々曲がって、って待ってこっちに——)

 ちゅどぉぉん、と。見事に巻き込まれた。


「……ん?」

 ちゅどぉぉぉん。中には女の子が。

「おっと、マズいな」

 爆発が起こった方へ駆け寄る。

「ごめんね、お嬢ちゃん。大丈夫かい?」

 着ているパーカーがボロボロだが、一命は取り留めている。

 後ろのアイツは……流石に死んでるか。じきに生き返る。

「どこか痛い所はあるかな?お兄さんが治してあげよう」

「……あ」

 きっと痛いんだろう。治してあげないとね。

「ん?どこなのかな?治してあげるよ」

「……あのさ、お前さ」

「どうしたんだい?」

「人に怪我させといて、何言ってんだ?殺すぞマジで」

 刹那、爆発が起こった。そのまま吹っ飛ばされ、視認したときには困惑が浮かんでいた。

 何が起こっているんだ。魔力の量が尋常じゃない。魔力だけで殺される。

「【雷撃】」

 雷撃……!?


「【雷撃】」

(あーもう駄目だこれ。もういいやとりあえずストレス発散しよう)

 尋常じゃない量の魔力に体が暴走し、私は半分自暴自棄になっていた。

 上級魔法、【雷撃】。人間もヘリエルも、数万ボルトもの電圧に耐えることは出来ない。電気が流れるとたちまち心臓に支障をきたし、死に至る。

 流石のヘリエルでも再生能力は上がらない。血流がとてつもなく速くなることに体が耐えきれないからだ。なので悠々とストレス発散することができる。

「のたうち回れ」

 空が黒雲で覆われる。

 一個、二個、と雷が降り注ぐ。

(あー耳ぶっ壊れるわ)

 その音も相まって、さながら甲板に爆撃を受けたかのような大惨事。

「ひょ、【氷瀑】!」

「【火槍(フレイムスピア)】」

 現れた氷の滝を、一撃で葬り去り、大きな池が出来る。

「自分で電気流れやすくしてどうすんだ」

 私の足元にも池が出来ている。

「【火槍(フレイムスピア)】」

 今度は一撃で池を蒸発させた。

「流石に暑い」

 なお、サウナ越えの90度以上の霧が出来ている。

(当たらないな、これ)

「【誘導魔弾(マジックミサイル)】!」

 こちらは大きな魔力を発しているのに対し、向こうは霧で見えない。これでは防戦一方である。

(はぁ)

 めんどくさ。

「【タグ】」

 これで片を付けるつもりで大量の魔力を消費する。

「【閃光爆槍(カスミソウ)】」


「【閃光爆槍(カスミソウ)】」

(カスミソウ……?どんな魔法だ……?)

 こんな暑い中でまだ戦えって言うのか。

 グサリグサリと、何かが地面に刺さる音がする。

 そう考えていたところ、霧を搔き分けて——

 グサッと、至近距離に空から降って来たであろう槍が刺さった。

(!?)

 光を放っていて、少し眩しい。と思ったら、急に閃光を放ち始める。光が霧粒に乱反射して、とても眩しい。目を開けてられない。

 次の瞬間、爆音と共に激痛が走った。

 小さな何かの欠片が無数に体に刺さったような痛み。何が刺さったのか確認する間もなく。

「あがっ……!」

 体を何かで貫かれて、意識を失った。


(やったのかな……?)

 霧でよく見えないが、短い呻き声の後に倒れる音がしたので恐らく死んだのだろう。

(うわ。服ボロボロじゃん)

「【修復I(リペア)】」

 出血が酷く、見るも無残な姿になっている。

「【回復Ⅱ(トリート)】」


 新品さながらのパーカーを着たまま、私は公園を出た。

読んでくださり、ありがとうございます。

魔法が使えるお話は二個目ですが、世界線は勿論違います。

何なら一から作ってますし、魔法の名前とかは英語訳しただけです。フリガナが無いものはそのまま日本語で読んでください。時すでに遅し。

多分連載続くのでお世話になる事でしょう。そこの貴方。

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