蟷螂、テイムする
蟷螂の鋭い攻撃をアルマはギリギリで回避する。そしてすぐに蟷螂を殴るが、堅牢な身体にダメージが与えられなかった。
「硬すぎる!?」
蟷螂はそれを喰らい、さらにスピードを上げた鎌の連撃を浴びせる。それはアルマの【撃鎧】や皮膚を頬に傷をつけていく。
「ッ!避けても意味はないが、こいつにダメージを与えないと…ッ!」
その瞬間、アルマはある本の内容を思い出した。
その本は魔力を使った格闘術が掲載されており、魔力を乗せた打撃は練った魔力によって威力が変わると言うもの。
それを思い出したアルマは拳に魔力を纏わせ、蟷螂の連撃の一瞬の隙を見て再度殴った。すると、蟷螂は咆哮を上げながらよろめいた。
「ダメージがある!」
その反応を見たアルマは魔力を乗せた蹴りで蟷螂を蹴り飛ばす。蟷螂は紫色の血を吐くとアルマを見た。
その目は蟷螂がアルマを『獲物』ではなく『強敵』と認めた目をしていた。それを見たアルマは冷や汗を掻く。
「ここからが本気か…!」
蟷螂は鎌を見つめると右腕の鎌には風を、左腕の鎌には炎を纏わせる。
「付与魔法!?そんなこともできるのか!?」
アルマはそれに驚いていると、蟷螂は炎の斬撃と風の斬撃を同時に放つ。アルマはそれを回避すると、蟷螂はすぐさま接近して近接戦闘を始めた。蟷螂の一撃一撃が木々を切り裂き、近くにいた魔物をも切り裂いていく。
(防戦一方じゃだめだが、これ以上近づけない!!!…なら、これしかない!)
アルマは蟷螂に突撃すると、蟷螂は両腕の鎌を振るう。アルマはそれを躱す…ことはなく、その直撃を受けた。その鎌はアルマの身体に深々と突き刺さり、肉体を裂かれる痛みと焼かれる痛みでアルマの顔は歪んでいく。蟷螂はそれを見てアルマに顔を近づける。貪り食うために顔を近づけたのだろうその顔を、アルマは左手で掴んだ。
「お前みたいな怪物に無傷で勝てるとは思ってないが…この距離ならお前も鎌は触れないだろ…」
血反吐を吐きながらそう言ったアルマは自身の魔力を全て乗せた右腕で蟷螂を殴る。蟷螂はその直撃で吹き飛ぶと、その勢いのままアルマの身体を切り裂かれた。
「…はぁ…はぁ…」
アルマは自身の死を確信しつつ、蟷螂が吹き飛んでいった方向を睨むとそのまま倒れてしまった。
ー
そして、アルマは目を覚ました。
「…何でだ…?」
死んだと自分ですら思っていたアルマは起き上がるとある異変に気づいた。自身の身体が治っていたのだ。自身の身体を触りながら痛みを感じないことに気づくと、ある鳴き声が聞こえた。
「キシャア」
「なっ!?」
アルマはすぐさま飛び退き、【撃鎧】を纏おうとした瞬間、あることに気づく。
「敵意を感じない?」
「…ニンゲン、ダイジョウブ。モウ、キズツケナイ」
「しゃ、喋った!?」
目の前にいた蟷螂が喋ったことに驚くと、蟷螂は話を続ける。
「オマエ、ツヨイ。ワタシ、カオ、ハンブンナクナッタ」
「あるじゃねーか」
「エリクサーッテイウ、クスリツカッタ。コレ、カラダナオル」
「エリクサー!?伝説上のポーションだぞ!?」
「アソコ、イッパイアル。オマエモ、ソレデナオシタ」
「…何で治したんだ?俺を」
「…ツヨイヤツ、シナセタクナイ。ツヨイヤツ、ワタシノツガイニスル…」
「…あっ…」
アルマは理由を聞いて冷や汗を滝のように流すも、蟷螂は話を続ける。
「デモ、ニンゲントノコドモウメナイ。コノカラダジャ、ムリ」
「だろうな。というか、何で喋れるんだ?」
「トアルホンヨンダラ、シャベレルヨウニナッタ…」
「…知識の書か?」
知識の書とは、それを読めばどんな生物でも知識を持ち喋れるようになると言う伝説級の書物だ!
(…いや、エリクサーが大量にあるんだったらないことはないな…S級だからなこのダンジョン)
「…オマエ、ナマエハ?」
「…アルマ」
「アルマ、イイナマエ。ワタシ、ナマエナイ」
「…付けようか?ただ、そうなるとテイムしちゃうが…」
「テイム、シッテル」
「…なら何でつけてほしいんだ?」
「アルマト、イッショニイタイ」
「…分かった、なら名前は…」
アルマは蟷螂を凝視するとつぶやいた。
「…安直だが、スカーレットってのはどうだ?」
「スカーレット…イイナマエ」
すると、スカーレットとアルマの間に魔法陣が現れる。
「スカーレット、血をちょっと出してくれ」
「ワカッタ」
双方が血を少し出すと魔法陣は2人を包み込み、消えた。
「これでOK。これからよろしく、スカーレット」
「ヨロシク、アルマ」
アルマとスカーレットはそう言うと、鎌と拳を合わせた。