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エン 前編

恋愛要素がうっすーいので、おまけの話です。

今年もよろしくお願いします。

 その日、皇后妃殿下は荒れていた。


 夫である皇帝陛下が溺愛する妹が、嫁いでいた王国から帰還したからだ。しかも皇帝自ら迎えに行ったとあっては、荒れ具合も一段と凄いというものだ。


 宥める妃殿下の妹である母を見ながら、エンは「あの扇、よく持ちこたえてるなぁ」とか思っていた。


 妃殿下の手にある扇は、鉄扇であるにも関わらず、ぐにゃりと歪みかけていたからだ。ナイスファイト、扇。


 キィィィと鉄扇を折りかけている妃殿下に、あらあらまぁまぁ、とエンの母はのんびり声をかけた。


「妹君は離縁なされてお帰りなのですから、お姉さまが優しく出迎えて差し上げればよろしいのですよ。懐の大きさを見せつける良い機会ではありませんの」

「なぜわたくしが出迎えなくてはならないの!! あちらが挨拶にくるのが筋ではなくって!?」


 それもそうだ、とのんびり頷く母に、また癇癪を起こす妃殿下。相性がよろしくない姉妹なのだ。うん、しょうがない。


 そんな騒がしい妃殿下の自室に、皇帝からの先触れがきたのは、すぐのことだった。


 先触れの後ろから現れる皇帝に、部屋の三人はそれぞれ礼をとった。


「皇后よ、今帰った」

「お帰りなさいませ、へい、か?」


 妃殿下の視線が、皇帝の腕の中に釘付けになっていることに気づいて、腕の中にいた美少女がてしてしと腕を叩いた。


「おじさま。ごあいさつがしたいのです」

「うん? そうか」


 デレデレとした皇帝に下ろしてもらった美少女は、裾を捌いてカーテシーをした。


「おはつにおめにかかります。ダイナのむすめの、ティナにございます。こうごうひでんかにおかれましては、ごきげんうるわしくぞんじましゅ」


 噛んだ。最後の最後で。うぉう! と動揺したまま、赤い顔でテヘ、と笑って誤魔化そうとしたらしい。


 銀髪に紫の目の、皇妹殿下にそっくりだが、愛嬌のある笑顔。


 ずっきゅん! と誰かのハートに矢が刺さった音がしたが、はて誰だろう。


「お久しぶりでございます、皇后妃殿下。お恥ずかしながら出戻って参りましたが、ご迷惑をおかけしないよう、努めてまいります」

「此度は災難でありましたの、ダイナ様。ごゆるりと静養なさるがよろしいかと。ご令嬢は、挨拶もしっかりとできて愛らしいご様子」

「「ありがとう存じます」」


 さっきまでの癇癪どこいった。妃殿下は優しく微笑みながら母子を見ている。役者だな。


「あの、ひでんかにおたずねしてもよろしいでしょうか」

「これ、ティナ」

「よいよい。なんでありましょう?」

「ありがとう存じます! あの、そのドレスはひでんかのおみたてですか?」


 キラキラとした瞳で見上げられて、トゥンクとトキメキの音がしたが、誰も気にしない。いいのか、いいんだ。


「ええ、わたくしが生地から選んだものですわ」

「きじから! だからあんなばらんすよくがらがとっちらからないのね! ところどころちりばめられたほうせきがうるさくないし、ゆるさのなかにきひんがあってとてもおにあいです!」


 ステキ! と上気した頬でうっとりとドレスに見とれる美少女に、エンは引いたが、大人たちは大変微笑ましい表情である。


「王国ではなかなか帝国のドレスを作れなくて。ティナは帝国のドレスが大好きなのですわ。妃殿下のセンスある装いに心奪われているのです」

「なんと、それは難儀なこと。わたくしでよければ何着か見立ててさしあげましょうか?」

「よろこんでー!!」


 きゃっほいとバンザイするティナは、淑女というネコが逃げ出して日向ぼっこしているのに気づいてないが、それ以上に素のティナ、良い! と思っている親バカ伯父バカ伯母バカがいる。エンは真顔でドン引きだ。



 そんな出会いの、美少女と学友という名の幼なじみ兼護衛になるのは少し後のこと。


 エンの退屈知らずな日々の始まりだった。



後編で完結です。

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