092 ノーマッド総長”カピート”
クラリスはちいさく息を吐き、「そう。あんなサディストには」と言う。
「でもまあ元部下がここにいるんだ。攻略法を教えてくれるってことだろ?」
「教えなければ私の首まで締められるしね。良い? ノーマッドの総隊長の名前は“カピート”。旧魔術の精通者よ。手札の多さでいえば貴方の比ではないわ」
「おれより手札が多い? こっちは斬撃も打撃もあんま効かないし、吸収もできて水打てば実質無限再生できるんだぞ? それより持ち札が多いってことはねえだろ」
「あるわよ。そこの子ならよく知ってるはず」
クラリスはミリットを指さした。そういえばミリットの姉は賞金稼ぎをしているとかしていないとか言っていたな。その手法が変わり種なのか。
「……。お姉ちゃんはかつて使われてたはずの魔術、そしていまとなればほとんどのヒトに忘れられてしまった魔術のエキスパート。あのヒトがMIH学園に入学できたのも、学生としては異例のカテゴリーⅥなのも旧魔術のおかげ」
クラリスでなくおれの目を見ながら話したミリット。どうも彼女のことを苦々しく思っているらしい。ミリットは続けた。
「旧魔術はいま一般的に使われてる魔術の元になってる。威力や範囲ではいわゆる新魔術に劣るけど、ひとりひとつしか取得できない新魔術と違って旧魔術はいくらでも獲得できる。そんなところ」
クラリスは頷き、おれに目をあわせる。
「ただしカピートの新魔術は誰も見たことがない。旧魔術のみで怪物を沈めてきたからよ」
厄介事に愛される気質なのはまるで変わっていない。おれは首を横に降って溜め息をつく。
「分かったよ。とにかくソイツがこの前みたいな大量殺人事件を起こす前におれたちで止めろってことだろ? タイラント=ポールモール鉄血同盟で」
「簡潔に言い表すとそうなるわね。セブン・スターのタイラント陛下」
嫌味な言い方だ。すこしくらい毒づきたくなるが、身内内で言い争っている場合でもない。
「時間は有限、有言は実行。ノーマッドも解散命令が出されてから久しいわ。そろそろあの男が動き出すわね──」
刹那、まばゆい光の前に目がひれ伏した。
次に見えた光景は、倒壊した我が家だった。
「ははァッ!! ご機嫌うるわしゅう怪物の諸君!! いまから判決文を言い渡すぞ!!」
おれは慌てずにできるだけ冷静に努め、「……。ミリーとタイーシャを守れ。ギリギリのところで防御壁張っておいて良かった」とクラリスに耳打ちする。
「被告タイラント!! 被告クラリス!! 被告その他有象無象!! 判決死刑!! 死刑!! 死刑だァ!!」
目がちぎれそうな輝きとともになんらかの攻撃が飛んできた。直視できない以上、勘で避けるしかない。
……いいや、避ける? 旧魔術は新魔術とやらより威力で劣るんだろ? だったら吸収してやれば良い。
おれは手のひらを向けて、その攻撃を真正面から喰らった。
「おお!! 良いねえ!! 避けてたらオマエら全滅だったのになァ!?」
なんだ、これ。おれは手のひらから吸収されたその魔術による物体を解析する。
やがて答えへたどり着き、カピートに向けておれはブチ切れる!!
ヘルシングを思い出すセリフ回し……というかオマージュ?
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