045 本日4度目の戦闘
「小粋」
「分かってる」
小粋はペダルを一気に踏み降ろし、大急ぎで安全が確保できる道路へ向かう。バックミラーに見えたエルフは3人。手負いのエコー単体だけではそう長く保たない。
「ミリー、タイーシャ。オマエらは車の中で伏せてろ。あそこに向かうにゃ危険すぎる」
「……。分かった」
「あたしも闘うよ!?」
素直なミリットとは対照的にタイーシャはやる気満々だった。説得できる時間はない。ただし戦闘に巻き込むわけにもいかない。だからおれは得意の方便でタイーシャを落ち着かせる。
「オマエはジョーカーだ。おれがやられたとき助けてくれ」
こう言っておけばなおさら負けられない。過ごした時間は短かれど、このふたりにはしっかり愛着が湧いているのだ。
「分かった! なんかかっこいい立場で待ってる!!」
それと同時に小粋が車を停める。おれは即座に車から飛び出た。
「小粋、負けるなよ?」
「おれァ赤鬼だぞ? エルフごときに負けるかよ」
言葉も少なく、おれたちは戦闘区域に向かっていく。距離にして500メートルほど。エコーが必死に足止めしている光景が見られた。
ただ、エコーがいる以上自身を弾丸にすることはできない。それに速攻で終わらせるにはあの技が一番だが、素粒子のように分離している間に凍らされたりでもされたらおしまいというリスクもある。
だからおれは初歩的な方法で攻撃を仕掛ける。
「怪物の片鱗──皇帝の右腕!!」
いつの間にか必殺技の名前を叫ぶことが習慣化してしまったが、ここは異世界なのでお誂え向きだろう。
というわけでおれは伸縮性を活かして右腕を伸ばす。やがて巨大化した右腕はエルフのひとりを掴み取り、ねばねばしたスライムが彼女を逃さない。おれはそのまま伸ばした腕の方向を縮め、彼女との距離を狭めていく。
「って、なんでオマエもくっついてるんだよッ!!」
「こっちのほうが速くつくだろ!? タイラー陛下!!」
小粋は瞬発的に縮まっていく距離感の中、どこからか金棒を出す。
「おらァ!! 美人だろうと殴るのに容赦すると思うなよ!?」小粋は金棒をエコーに攻撃しようとしたエルフに向け、「重羅刹!!」と叫び頭へそれをフルスイングした。
「……ッ!?」
「やはり3人で行動していたか……!! 大丈夫か?」
「目が覚めましたよ……」
エルフ3人組はそんな会話を交わす。
頭数もちょうど良い。もっともこちら側のひとりは手負いではある。
おれは小粋に、「できるようだったらエコーのカバーしてやれ」と耳打ちする。
「構わねェけどよォ、オマエは誰潰すんだ?」
「コイツだ」
一番身長が高く、髪の色はくすんだ青色。魔力の質と量的にコイツが首謀者だろう。
この世界に来てから21日19時間37分56秒目。だんだん他人の魔力量も感じ取れるようになってきた。
「分かったよ。エコー、行けるか?」
「心配ご無用です……。この程度では閣下の秘書官は務まりませんから……」
本日4度目の戦闘が始まる。
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