019 朝チュンの大罪
寝起きの口臭って萎えますよね。そんな話です。
朝チュン。それは男の野望。おれはスライム娘だからか睡眠時間は短い。だいたい1時間もあれば充分だ。
対してミリット。彼女は立派な人間だ。だいたい6時間から8時間は眠るのではないだろうか。寝る子はよく育つので喜ばしい話だ。
ふたりはシングル・ベッドに無理やり入り込んでいた。クラリスからもらったパジャマ、そりゃおれしか使わない想定なので図らずともミリットとおそろいになってしまった寝間着。暖房はつけっぱなしなのでひんやりした身体を求めておれを抱きしめるミリット。
「んー……。私、MIH学園なんて無理だよ……ん……」
彼女は悪夢を見ているらしく、割りと頻繁に『MIH学園』という単語を口にする。その度になにかの助けになるのか分からないが、おれはミリットの背中を撫でる。
そんな朝チュン。気分は良いが、悔しい気持ちもあるのです。これがスライム娘の姿でないとできないことだと知っていても、それでもどこか虚しいのです。
と、悲しさを覚えている頃、ミリットが目を覚ます。
「……抱きついてた?」
「イエス」
「……。忘れて」
「イエス・アイ・キャン」
急に片言になったおれをいぶかしむミリット。さあ、一日のスタートだ。
「ロリコンはなに食べるの?」
「おれはロリコンじゃねえっての。どちらかといえばオマエのほうから抱きついてきた──うぉ!! トースター投げるのはやめろ!!」
あまりに複雑な乙女心。知ろうと思って知れるものでもないだろう。所詮見た目がスライム娘の男だ。
そんなお怒りなミリットは携帯電話を見て、その画面をおれへ見せつけてくれた。
「15,000メニ-。やっぱりお姉ちゃんは頼りになる」
15,000メニ-? それって日本円で何円になるんだろう? 日本円とメニ-の為替なんて分からんしなー。
「ロリコン、なに食べる? すくなくともフィッシュ・アンド・チップスは当分食べなくて大丈夫だよ」
なにやら楽しそうな(めちゃくちゃ薄いが)表情になるミリット。なにを食べると言われても、スライム娘は水だけ飲んでいれば死なないんだよな~。
「超高い水で」
「なんで水を?」
「オマエが教えてくれたんだろ? スライム娘はなにも食べなくても死なないんだって」
「そうだった。テンション上がりすぎて忘れてた」
テンションの高い者の面持ちではなかったりする。それはなにもないときの表情だぞ、ミリット。
「やっぱりブレックファーストかな。朝ごはんといえば」
おれはチラッとミリットの携帯電話の画面を見る。
映し出されていた画面は某ウーバー。ミリットの食べたい朝飯『ブレックファースト』はだいたい2メニ-から10メニ-ほど。そしてなんの躊躇もなく10メニ-の豪華なセットを頼んだ。
「5分後には来るはず。とりあえず歯磨きしてくる」
…………言いにくかったんだよね。小粋との戦闘を経てスライムがだいぶ減ったおれは、ミリットの口臭をもろに受ける距離まで縮んじゃったから。仕方ないよミリット。みんな、寝起きは口が臭いものさ。
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