017 ミリットとの同居生活開始
「……。はい?」
「妹は貴方に懐いてるようなので。それになんとかしてあげたいんでしょう?」
異世界転生16日20時間56分45秒。おれは立派な“ロリコンスライム”になったようだ。でもロリコンの気なんて存在しないし、あの狭苦しいウィークリー・マンションにもうひとり住む人間が増えるなんて訊いてないっすよ……。
だけどメリットは頭を上げ、このまま同居を許さなければ原始的な方法に頼るからな、と言わんばかりに目の色を変えてくる。胃が痛くなってきた。胃がどこにあるかなんて知らないけど。
「み、ミリーはそれで良いんですか?」
「……うん」
こういうとき照れて顔を赤らめれば可愛らしいものだが、やっぱりミリットはあいも変わらず無表情なのだった。
「タイラント、中学生女子と同居なんて聞くヤツが聞けば血の涙流すぜ? ここはロスト・エンジェルス。性依存症患者の街だからな」
黙れよ、小粋!! それじゃおれがロリコンみたいじゃないか!? 恋愛経験ないからって小児愛者だと想うなよ!?
というか性依存症? 草食っていたときから思っていたけど、この国はやっぱりどうかしている。夜9時ごろに公園のど真ん中で男女が男女の関係になっているのを何回も見てきたおれだからこそ言えることだ。
「金銭面はなんとかしますので、うちの妹をよろしくお願いします」
「……どのようにおカネを用意するのでしょうか?」
「これでも賞金稼ぎを兼任してる学生ですので」
「賞金稼ぎ?」
「細かいことは気になさらず」
どうやらメリットは素性を探られるのを嫌っているらしく、その語気におれも次の言葉を失った。
「じゃ、帰ろうか。ロリスラ」
もはやミリットが帰宅する場所はおれの家になってしまったようだ。六畳一間にふたりの男女……いまのおれはスライム娘だが、あまり変わりがあるようには感じない。
……そうだよ!! おれはスライム娘だぞ?
「……。メリットさん、おれはスライム娘だけど妹さんを任せて大丈夫だと思ってるの?」
「悪いスライムではないんでしょ? きっと」
「ま、まあそうだけど」
「なら問題無し。これ以上話すこと、ありますか?」
なんでこんな身長も低けりゃ猫背の女子にちょっと恐怖を覚えているのか分からないが、おれは情けなく、「はい……」と返事してしまった。
そしてミリットが家へ帰るために小粋の車に乗ってしまった。色々と納得していないが、おれもそれに着いてくのだった。
「アンタも策士だねェ」
「なんのことやら」
「タイラントはクラリスっていう性悪女と繋がってる。あの女は近いうちにアイツへ自分らにとって気に入らない人間を消すように命令出すだろうさ。そこにアンタの妹がいればアンタの“お気持ち”も出しやすくなるってか」
「おしゃべりな赤鬼ね」
「いーや。おれはアンタの考えに賛成だぜ? おれァアイツを、ロスト・エンジェルス怪物狩り部隊『ノーマッド』の“副総長”クラリスの思い通りにはさせたくないもんで」
ミリットとの同居生活が始まる。
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