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6.女性捜査官ダニエラとリオナ

作中の世界では季節が2か月くらい進んでいます。1の月は3月頃にあたります。

 新年となり高等学校の最終学年に進むとわたしのスクールライフは些か平和になった。

クリスタは社交界活動のために礼儀作法の実技クラス・ダンスクラス・刺繡中級者クラスの中心に受講するようになり、わたしは将来的に自活する目標のために世界地理・世界歴史・外国語などを選択したためだ。素晴らしい!エクセレンテ!


 護衛を伴って徒歩で通学しているわたしが、通学路で死霊を目撃することはそう毎日あることではない。悪霊となると滅多に見るものではなく年に数回あるかだ。

年の終わりの11と12の月はとても寒いので例年死者が増え、バーナードの姪のような霊を見る機会も多くなる。自然なこととはいえ誰かが亡くなったのを見るのは悲しい。

1の月になると春の訪れとともに人々の活気も出てきて、霊を見ることも減ってくるので気持ちも弾んでくる。


 ところで彷徨っている死霊をよく見るならその霊たちはどうなるのかというと、通常皆ちゃんと成仏している。ふつうは葬儀を執り行う神官がその役割を担っているからだ。

また、公認霊能力捜査官が定期的に彷徨い霊や、悪霊の類である地縛霊や憑りつき霊がいないか巡回して対処しているからというのもある。



 1の月も終わりという頃、巡回中とみられる女性捜査官に出くわした。いつもは警ら詰め所に報告に伺うばかりだったし、男性がほとんどだったのでとてもめずらしい。しかも巡回中とは。僥倖だとばかりに話しかけることにした。


「あの、職務中に突然お声がけしてすみません。

 わたし、セイラ・スプングリスと申します。少しお話させていただいてもよろしいでしょうか?」

「あら、貴族のお嬢様。どうしましたかー?何か報告でも?」

答えてくれたのはわたしよりも体が大きくライオンのような勇ましいお顔に見える捜査官。ちょっと怖い。しくじったと思った。


「いえ、あの報告ではないのですが…わたしも死霊が見えるんです。

 それで捜査官、特に公認霊能力捜査官の方々に興味がありまして…」

 わたしには相手の顔がお絵描きのように抽象的に見えるせいで、相手の表情から感情を読み取れないという欠点があった。なのでいきなり話しかける前に、護衛のアンドリューに話しかけるタイミングを見計らってもらうべきだったかもと思い始めていた。やっちゃった…

とりあえず正直に答えたところ、


「あなたはスプングリス家のセイラ様とおっしゃいましたね。たまに警ら隊の詰め所に報告にいらっしゃる方ですよね?

 興味とのことですが、どのようなことでしょうか?我々も巡回中の身ですので、あまり長く時間はとれませんが。」

わたしと同じような背丈の女性がやや硬質な声で答えた。大きな目がゆっくりと開かれ、柔和な笑みに見えるが目はこちらを見定めるかのようだ。やっぱり迷惑だった、かな?


「わたしも公認資格をとって公認霊能力捜査官になりたいと思っていて、それで…

 あの、父には危険だと反対されているのですけど、でも、危険ではないと証明することができれば、と思いまして…」

またとないチャンスだったので聞きたいことを聞いたが、不安からつい俯いてしまう。


「ふふふ、こちらのご令嬢はだいぶ勇ましい方ですね。」

公認霊能力捜査官のダニエラは、俯いているサラの後ろに控える護衛のアンドリューを見た。アンドリューはただ苦笑を返す。

サラはぱっと顔をあげてダニエラを見る。ご迷惑ではなかった?大丈夫そう?


「申し遅れました。私は公認霊能力捜査官のダニエラ、こちらはパートナーの一等捜査官リオナと申します。

 お嬢様へのお答えですが、危険かと言われれば危険でもありますが、そう危険でもありません。

 ゆっくりとお答えしたいところですが、今は職務に戻らなければなりません。

 お嬢様、治安維持部隊本部はご存じですか?我らの訓練日によければ見学にいらっしゃいませんか?本日よりかは時間もとれますので、ご質問にゆっくりお答えできると思いますが。

 もちろん御父上であられる侯爵閣下の許可が下りればの話ですが。」

サラの顔がぱあっと輝く。


「ええ、ええ、是非とも!お願いしたいです!父に伺いますわ!」

「ではこちらから見学可能な日時をお知らせ致します。

 またお会いできることを楽しみにしていますよ。では失礼。」

二人は颯爽と立ち去って行った。





「ねえ、ダニエラ。あのお嬢さんを気に入ったのー?本部に招待するなんて。」

大柄な捜査官のリオナが小声で問いかける。


「侯爵家のご令嬢だというのに面白いではないか、リオナ。

 彼女の名前は以前から目撃情報の報告書で見知っていたんだ。公認霊能力捜査官に興味があるのも本当なのだろう。

 確かに治安維持部隊の総隊長はフラーゲンクルト伯爵家の当主であるし、他にも幾人か貴族家の子息が在籍している。だがな、治安維持部隊の本部に詰めるならまだしも現場の捜査官になるのはそう簡単なことではないぞ。君もよく知っているだろう?」

「なるほどー、訓練を見せて夢を打ち砕くってわけねぇ。ダニエラは意地悪ね。」

「現実を見せてやるんだ、親切じゃないか。」

そういってダニエラは笑った。


読んでいただきありがとうございます。

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