43.様々な会話
しばらくの間不定期に更新します。
迎えが来るまで母と様々な話をした。
母に先月の成人誕生パーティーの時のことを聞かれ、アルマが王子の話をするものだから母に色々と聞かれてしまった。ポケットに入れてあったアメジスト石の付いたヘアピンを見せたり、王子との最初の出会いから最高学府で神学部の講師を紹介してもらったことを話したりした。
最初は年頃になってきたのねぇ微笑ましいわ、と言っていた母だが、話をするにつれ少しずつ表情が曇ってきた。
「呪いのことでご協力頂いたり色々と助けて頂いたのはとても有難いことだわ。でもサラ、憧れだけに留めておきなさいね。
他国の王族に嫁ぐ覚悟があるわけではないでしょう?高位貴族に嫁ぐ以上に大変よ?
お慕いすればするほどあなたが辛くなるわ。」
と悲しそうな顔をした。
母に王子の話をすることで王子に会いたい気持ちが大きくなってきていた、そんな時に母のこの言葉に俄かに悲しい気持ちになった。
午後のお茶を母と過ごした後、迎えの馬車を寄越してもらい屋敷へと戻った。
執事がグレッグのいるサロンへと案内する。今後の予定についての話だろうか。
「戻りました、お異母兄様。」
「ああ、久しぶりの再会を楽しんだか?」
「はい、お陰様でゆっくり過ごせました。」
「それはよかった。さて、セイラがいない間にガブリエル様と今後について相談した。
もし明日の朝までに奪われた媒体を取り返せたら、もう一度療養院に向かい解呪を試みる。
もし取り返せなかったら、明日の午前中にはここを発つ。いいな。」
「はい、わかりました。」
本当は明日もまた母に会えるつもりでいたから、もう少し待って欲しい。でもわたしと母の為に、グレッグと神官達の滞在をもう一日延ばすのは我儘になるだろうと承諾した。
仕方ない、夏季休暇まであと二月待てばまた領地に来られるのだ。我慢、しよう…
◇
夕食は晩餐会のごとく豪華だった。依頼したとはいえ、三人もの神官達に領地までお越しいただいたのだ。スプングリス侯爵家の大事な賓客としてもてなすことにしたようだ。
本来なら盛装で参加すべきなのだが、神官達に合わせて華美になり過ぎないようにワンピースで夕食に臨んだ。良かった、堅苦しい食事の席にはならずに楽しめそうだ。
夕食ではグレッグが領地の特産品や景勝地などを誇らしげに語る。時間に余裕があれば色々と案内したいところだと紹介説明を締め、神官達の感想や体験話を促した。
意外にも神官達は各領地に派遣されることも多く、ガブリエルさんと上級神官マシューさんはいろんな地方に行ったことがあるということだった。
通常、平民は領を越えて旅をすることはほとんどないそうだ。経済的に余裕のある裕福な人々、つまり貴族や豪商一族、あとは芸術家や各地で商売をする商人などだそうだ。知らなかった。
神官カーティスさんが言うには、神官もいろんな領地へ訪れることが出来るので素晴らしい職業です!とのことだ。でもやはり王都が一番大きくて色々なお店があって楽しい場所で、多くの平民にとって一生に一度は訪れたい場所と熱弁していた。
そんなカーティスさんもマシューさんも地方出身で、資質があった故に上級神官を目指すために王都に来ることになったそうだ。
興味深く聞いていたが、そういえばと頭に浮かんで思わずガブリエルさんに質問していた。
「ガブリエル様は王都出身なのですね。」
「ええ、私は…王都の生まれで物心ついた頃より神殿で育ちました。」
「ほう、そうなのですか。
幼き頃より資質を見出されたということでしょうか?」
ガブリエルさんの返事がグレッグの興味を引いたようだ。わたしも興味が湧いたけれど。
「私には霊能力の他にも聖光と呪を視認できる能力がありましたので、神殿に引き取られました。」
「なるほど、ガブリエル様の類まれなる能力は資質が優れていたことも起因しているのですね。
ところでその資質や能力は家格や徳の高さなど家系に依るところが大きいのでしょうか?それとも個人の素質や努力によるのでしょうか?」
「家系の方もおりますし、個人の素質にも依りますし、どちらとは一概には言えないでしょう。」
「ガブリエル様は家系ではないのですか?後天的に同じ能力を得ることは可能なのでしょうか?」
「…私は孤児院出身ですので家系かどうかは判断がつきません。
たゆまぬ修練の結果同じ能力を得ることは可能ですが、並大抵のことでは叶わないとお思い下さい。」
「そうでしたか。セイラが神官を目指しておりますようで思わず、出過ぎた質問を致しました。どうぞお許し下さい。」
「サラ様を応援なさっておられるのですね。何も無礼ではございませんのでお気になさらずに。」
応援…グレッグはわたしに大神官になって欲しいのだろうか?
そこまで高みを目指しているわけではないが、悪霊を祓える上級神官を目標としたい。
それとガブリエルさんは生まれつき加護と呪いを見ることができるってことだけど、家系ではないのか。国王陛下と王子同様、きちんと顔が見えた人だったから当時は王族に所縁があるものと思った。
その後も晩餐は和やかにかつ食事を楽しみながら終えた。
昼食も夕食もいつもより豪勢だったので体が重く感じて仕方ない、明日は早く起きて庭内を散策をしようなどと思いながら自室に戻る。その途中でガブリエルさんが話し掛けてきた。
呪いの件で少しお話がしたいと。
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