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4.5 それぞれの心の内

 悔しい!

けど悔しいなんておくびにも出さないように振舞ったわ。私は由緒ある家柄の血筋を継いでいる侯爵令嬢なのですもの。顔だけが取り柄のサラになど負けるわけないですわ。

だから今日はおめかしに時間をかけて準備したのよ。


 プレミオス侯爵家出身の正妻であるお母様、次期侯爵となる麗しいお兄様、そして現侯爵のお父様。本物の家族団らんの中に、一人陰気に食事しているサラなどスプングリス家のはみ出し者でしかないわ。

何か問題でも起こして貴族籍から除籍されないかしら。うーん、それだと私たち家族が恥ずかしいわね。それじゃあ…年がうんと上の成金商人にでも嫁ぐってのがいいわね。そしたら平民落ちするし、スプングリス家に支度金が上納されるし、役に立つのじゃないかしら。そうよ!


 私、サラと並んで一緒に茶会や夜会に参加するなんて、絶対にいやですわ!





 今日は家族が一堂に会する日だ。

今年の展望として、父は私の結婚相手探しについて言及するだろう。そして今年高等学校を卒業する妹2人についても。


 同母の妹はスプングリス侯爵家とプレミオス侯爵家の血をひく由緒正しい血統であるし、それなりにキレイな容姿なので公爵家や王族の婚姻相手として申し分ない程だ。王族には適当な年齢の子息がいないうえに、2大公爵家の次期当主もすでに結婚してしまっているのが残念だが。

母は正妻としてのプライドからか、男爵出身の愛妾であるマイアとその娘、すなわち異母妹のセイラを見下している。なのでクリスタには名門貴族を、もちろんセイラよりも格上の相手を望んでいるはずだ。


 異母妹だろうがセイラはかなりの美貌の持ち主だし、侯爵家令嬢であることに変わりはないので、むしろ嫉妬とライバル心で冷静さを欠きやすいクリスタよりも有望であろう。変わり者との噂が大きくなってしまったが、こうして盛装した姿を見てしまえば多くの者が結婚相手にと望むことだろう。

 なんて素晴らしい我が妹たちよ。それなりの有力家と婚姻を結んで繋がりをつけ、この私が当主となった時に大いに役立ってもらおうではないか。

所詮、貴族は政略結婚なのだ。我が父と母のように。






 上品で輝くような美しさをたたえたマイアの娘を目にして、心に浮かんだ嫉妬と憎悪を(おもて)に出さぬように涼しい顔をしました。侯爵夫人であるわたくしは心の内を悟られないよう社交術を磨きあげてきたのですから。


 もともとわたくしは次期当主だった夫の兄の婚約者でございました。婚約者の悲運な早世によって弟である現夫と結婚することになったのです。

その夫にはすでに婚約が内定していた男爵令嬢がおりましたが、次期当主となるのに身分が相応しくないということで解消されたのです。わたくしと比べるのも烏滸がましいですが。

 政略結婚である以上、感情面でとくに期待することはございません。夫は凛々しい容姿でもありましたので、社交界で華々しく輝ける侯爵夫妻として好ましくは思いましたけれど。

ですが、侯爵を継いで当主となることが決まったあの時、夫は元恋人の男爵令嬢を側室として迎え入れる、とわたくしに告げたのです!


 当主の決定は何にも勝ります。そして侯爵当主として後継ぎを設けることは当然の責務ですので、側室を迎えることは少数派ではありますが間違いではございません。

ですが…ですが、よりによって婚約解消となったあの男爵令嬢、政略ではなく恋仲だったという家格の低い令嬢を迎えるなんて!


 夫に恋愛感情などというものはございませんが、女性としての価値が低いと言われたも同然の気持ちでした。悔しさと嫉妬のような感情が胸に渦巻いていつまでも消えることなく、心に刺さった棘のように私を苛みました。


だから…だから…、

マイアがあの娘を産んだ時に、祝福と称して呪いを贈ってさしあげたのよ!

すぐに露見しないよう長期に渡って少しずつ蝕むような、そんな呪いをかけられる呪術師を秘密裡に探すのは骨が折れましたわ。

おかげでマイアは心と体を病んで療養院に送られることになりまして、もちろん心配する風を装い可哀そうな夫に寄り添いながら内心でほくそ笑みましたわ!

ですがあの娘…セイラは死霊が見えるですとか、人の顔が落書きのようなものに見えるなどという、およそ大した効果のない呪いしかかかりませんこと!


 多少性格に影響を及ぼせたかもしれませんが、あの美貌の前では奇行のある令嬢というだけでは大した障害になりません。並んでしまうと可愛いクリスタが霞んで見えてしまうでしょう。

グレッグは何か思惑があるようですが、あの娘がクリスタより上に立つなんてことは断じて許されません。早急になにか手を打たねばなりませんわね。







読んでいただきありがとうございます。

ここまで引っ張りましたが、残念オプションは呪いによるものでした。


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