24.パーティー当日③王子の贈り物
また更新が遅くなりました(汗
王子の到着に会場が少しざわついた。
あまり社交界に姿を見せないと言っていたので、他の招待客が反応したようだ。
王子は夜会の場に相応しく正装をして髪も整えていた。いつもと違う様子にドキッとしてしまう。ちなみにいつもの従者も一緒に来ている。
「今晩は。本日はご招待頂きありがとうございます、オーガスティン卿。」
「これはマキシミリアン殿下、ご機嫌麗しく存じます。ようこそ我が家のパーティーにおいで下さいました。
早速家族を紹介させて下さい。こちらが妻のパトリシア、それと本日成人を迎えましたクリスタ、嫡男のグレゴリー、以前お会いしましたセイラでございます。」
父がわたし達家族を王子に紹介する。本来なら次期当主の異母兄を先に紹介するところだが、本日の主役はクリスタなのでクリスタが兄の前に来る。
「侯爵夫人、本日は息女の成人誕生パーティーお招きありがとうございます。
卿にはいつも蔵書関連でお世話になってますので、足を運ばせて頂きました。存分に楽しませて頂きます。」
「初めてお目にかかります、王子殿下。御会いできまして光栄でございますわ。
本日は数ある招待の中から当家を選んで下さりましてありがとうございます。どうぞごゆるりとお楽しみ下さいませ。」
義母は恭しく淑女の礼をした。王子はクリスタの前に移動する。
「本日は成人の誕生日おめでとうございます、美しき令嬢…クリスタ嬢とお呼びしても?」
「は、初めてお目にかかります、王子殿下。はい…どうぞクリスタとお呼び下さいませ。」
「ありがとうございます。ではクリスタ嬢、これはささやかですが僕からの成人祝いのプレゼントです。僕の国テラディウス王国で採れたグリーンアレキサンドライトのブローチです。
喜んで貰えるとよいのですが。」
王子は懐から小さな箱を取り出して開けると、クリスタに手渡した。
「まあ!アレキサンドライトですって!希少な宝石ではございませんか!」
「クリスタ嬢が身に着けているグリーンエメラルドに比べたら、価値も美しさも劣りますけれど。」
「いえ、いえ!とんでもございません、王子殿下。我が国では入手困難な希少な宝石でございます。そんな貴重で特別なものを、我が娘クリスタに頂けますとは身に余る光栄でございます。」
「あ、ありがとうございます、光栄でございます、王子殿下。」
「喜んで頂けたようで何よりです。」
ニコッと微笑む王子。横から興奮気味に口を出した義母が特別さを強調しながらお礼をいい、特別という言葉に気をよくしたのか、頬を赤らめたクリスタが王子にお礼を言った。
そんな様子を見て胸が少し痛んだ。なぜだろうか?
「グレゴリー殿とは初めてお会いしますね。」
「初めてお目にかかります、王子殿下。
私も殿下と同じく最高学府にて勉強をしておりますが、残念ながらこれまでお会いすることがございませんでした。ですが本日を機に今後、妹だけでなく私も殿下の良き友人としてお近づきになれましたら光栄でございます。」
「ええ、後でまた最高学府の話をするとしましょう。」
異母兄は押しが強く会話が上手だ。王子相手にも臆していない様子に少し感心していた。
すると王子がわたしに顔を向けた。顔をしっかり上げねば!目が合うと胸がドキドキして顔が熱くなる気がした。
「セイラ嬢、本日はご機嫌いかがでしょう?先日は急に話しかけて失礼しました。
あなたも来年から最高学府神学部に進学する予定ですよね?グレゴリー殿と交えてお話をしましょう。」
「王子殿下、ご機嫌麗しゅうございます。
はい、神学部のお話を聞かせて頂けましたら嬉しく存じます。」
「ではまた後でゆっくりと。
あ、それと。あなたの異母姉にだけ贈り物をしては、麗しい美人異母姉妹を前に不公平ですね。あなたにもほんのささやかな贈り物です。こちらを。」
そう言って手の上に乗せた箱には紫色の石が付いたヘアピンが2つ入っていた。
「普段だけでなく本日のようなパーティーにもお使い頂ける物だと思いますよ。」
義母やクリスタからは見えないように、悪戯っぽくウィンクをした。
わたしのもっさりした前髪のことを言っているだけでなく、今日このパーティーで使って欲しいってことだ。なんて用意のいい、頼もしい協力者であるのだろう。
自分の不甲斐なさが恥ずかしかったが、作戦の為にも王子の期待に応えなければと思った。
「王子殿下の御心遣い、身に余る光栄でございます。
このような素晴らしいお心のお品ですので、早速身につけて皆様に披露致したいと存じます。」
王子が満足そうに頷いてくれた。期待に応えられて嬉しい!
「それではそろそろ本日のパーティーを開始するとしましょう。
マキシミリアン殿下は本日の主賓ですのでこちらに席を用意しております。どうぞ、こちらに。」
父が目で指示を送るとテキパキと用意が進んでいく。
まずは侯爵家当主である父の来場者への挨拶。
隣に侯爵夫人である義母と本日の主役であるクリスタが並び、皆で成人祝いの祝杯をあげる。わたしは未成年なのでジュースだ。
主催者の挨拶が終わると、各自また移動して歓談に興じる。わたし達主催者家族も各々に招待客との歓談するのだが、友人という友人もいないわたしには歓談する相手もいないので、そっとその場を抜けて再び化粧室へ向かった。
もちろん前髪に先ほど貰ったヘアピンをつけるためだ。
これで今日の作戦遂行の準備がようやく整った。そう意気込んでいたのだが、顔が見えやすくなったことで起こる弊害にこの時は気が付かなかった。
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