23.パーティー当日②次の手と思わぬ援護
すみません、体調不良で遅くなりました(汗
※サブタイトルを少し変更しました
16時30分になると家族全員で広間に移動する。
父と義母は広間の設営を見て回ったり、飲み物や軽食の出来栄えを確認したりしている。異母兄は自分の手帳を眺めている。
異母姉のクリスタとわたしは主催者用の一角にあるソファに座っている。お化粧直しに行くのはパーティーが始まってからが良いだろう。でなければクリスタにうるさく文句を言われるだろうから。
クリスタの盛装は文句なくとても華やかでとても美しかった。正直なところ羨ましさを感じていた。
王道とも言えるベルラインのドレスは、上部は白地の絹に金の粒が一面に散りばめられて光り輝いている。スカート部分は白地の絹の上を赤のチュール生地が覆っていて、その上には立体的な薔薇の花がたくさん縫い付けられている。腰回りの赤いリボンが可愛らしさを出していた。
髪にも本物の薔薇の花が飾り立てられて、クリスタの金髪によく映えていることだろう。
胸には大きなエメラルドのネックレスと耳にもエメラルドの耳飾り、動くと揺れてキラキラ光を反射している。確かクリスタの目の色が緑なのでそれに合わせた組み合わせなのだろう。
自分のドレスも菫色で可愛らしくて気に入っていたが、比べてしまうとクリスタのドレスの華やかさは圧巻と言えた。
「パーティーの準備は万端だな。
広間も輝くように明るくなっている。よく手配してくれた、パトリシア。」
「ありがとうございます、旦那様。クリスタの成人誕生パーティーですので張り切りましたわ。」
そんな会話をしながら父と義母が主催者用の一角に戻って来た。
「サラ、緊張しているのか?少し顔色が悪そうだ。」
「いいえ、お父様。体調は悪くございません。」
「サラ、あなた私の記念すべき成人誕生パーティーで辛気臭い顔しないでくださいませ!体調がお悪いのならお部屋に戻ったらどうかしら?」
「セイラ、無理はしなくてもいいですのよ。挨拶の間だけ頑張って頂いて、クリスタの言うように後はお部屋にお下がりになって?」
サラは気付かなかったが、この日のパーティーために広間の照明、壁の色、絨毯が一新されていた。特に照明は黄色味のある明かりから白っぽいものに替えられていた。そのためサラの顔色はさらに白さが強調されていたのだ。
「いいえ、いいえ。わたしは元気でございます。
せっかくのお異母姉様の晴れの日ですので、わたしも是非一緒にお祝いしたいです。」
義母の次の一手はわたしをパーティーから締め出すことだった?!でもそんな訳にはいかないので食い下がる。
「無理はなさらなくていいのですよ。
挨拶が終わった後はいつでもお部屋に下がっていいですからね。」
「そうよ、そんな病人みたいな顔していたら招待客を心配させるもの。困るわ!」
「お義母様、お異母姉様。わたしは大丈夫です。少し化粧を直して参ります。」
「ほら!無理してるわ!」
「母上、クリスタ。セイラは大丈夫って言ってるんだ。少し様子を見てもいいだろう?
セイラ、もう少し艶のいい紅を差してくるといい。それなら顔色も良く見えるだろう。」
援護してくれたのは、いつもギョロ目で観察しているかのように見える異母兄のグレッグだった。
「ありがとうございます、お異母兄様。お化粧を直して参ります。」
まさかパーティー開始前に退場させられそうになるとは。危なかった!異母兄に心の中で感謝した。
広間の外ではアルマが心得たとばかりに待っていて、2人で化粧室に向かった。
「パトリシア様がヘアメイクを手配するだなんて、やっぱり裏がありましたね!
劇場から専属者を手配したのも、病人っぽく見せるための舞台メイクをする為だったんですわ。見抜けなくて悔しいです!
申し訳ありません、サラ様。」
「あなたのせいじゃないわ。気にしないで、アルマ。」
アルマは頬に撫子色、唇に薄紅色をのせて自然な顔色に見えるようにしてくれた。
前髪も完全にあげるとまた難癖つけられるかもしれないので、下ろして横に流したままにした。
◇
招待客が続々と集まってきている。
子爵家や伯爵家の面々が主催者であるスプングリス家に挨拶にやってくる。大体は当主である父と侯爵夫人である義母に挨拶をし、本パーティーの主役であるクリスタに成人祝いの言祝ぎをしたら去っていく。
わたしは異母兄の隣、つまり列の一番端に立ってお辞儀をするだけだ。
そういえば伯爵家では一人見知った人がいた。治安維持部隊の総隊長であるアーノルド・フラーゲンクルト様だ。
ご無沙汰しております、本日はようこそお越し頂きましてありがとうございます、その節は大変お世話になりました、と短い挨拶だけをした。
次に侯爵家、辺境伯家、公爵家が挨拶に来始めた。もうそろそろパーティー開始も近いのだろう。
義母の実家であるプレミオス侯爵家、ドノーラン侯爵家、マーセイズ侯爵家に、2大辺境伯のフラントア家とボーダラン家、2大公爵のデューレクス家とイヤルル家が出揃った頃、見計らったかのようにテラディウス王国の第四王子が到着した。
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