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20.止まらないドキドキ

 可愛らしいって言われたけど何て返事をしたらいいかわからない。赤くなった耳がさらに熱を持ったように感じて落ち着かなくなったので、話題を変えることにした。


「あ、あの、1つ目の作戦で成功しなかった場合はどうするのですか?交渉する作戦に切り替えるのでしょうか?」

「そうですね。1つ目を選択した場合、神殿に診断と称してあなたの義母に来てもらった際に、あなたの解呪を再度試みてみます。それで解呪が成功するかどうかを見て判断しましょう。

 もし失敗した場合は、僕がまた呪いが繋がっていると指摘しますので、そこから交換条件を提示して交渉に持っていきます。

 あとは…オーガスティン卿に頑張って貰わなければなりませんね。」

「父が、ですか?」

「はい、部外者の僕が主導権をとって進めていくわけにはいきませんので。あくまでも会話の流れを誘導する程度です。」

「そうですよね。解呪のためにも父には頑張ってもらいます。」

と答えたが、父と義母の関係性がよくわからない。確か義母は父より一歳年上だったが、普段は父に随順している印象だ。父には是非頑張っていただこう。


「それと…女性にこんなことを言うのは失礼かと思いますが、パーティー当日は、セイラ嬢はなるべく目がよく見えるように着飾ってもらいたいです。僕があなたの目元に黒い靄が見えるというのが前提なので。

 本日の髪型は()()()()()よく見えていますが、俯いてしまうと目元がよく見えないのです。」

なんとも済まなそうな顔をしているのは、普段のもっさりヘアーのことも仄めかせているのだとすぐ気付いた。


 さすがに盛装するパーティーの場でもっさりヘアーのまま参加する気はなかったが、普段の自分がもっさりヘアーで俯きがちな地味女子であることが急に恥ずかしく思えてきて、両手で赤い頬を押さえこんだ。

でも王子は何も悪くないのだ。そんなことを指摘させてしまった自分が悪いのだ。

顔はまだ赤いだろうけれど、ちゃんと王子に答えなければと前を向いた。


「すみません。前髪で顔を隠していたほうが目立たずに済むと普段そうしておりますが、パーティーの場では貴族令嬢らしくきちんと致しますのでご心配いりません。」

「頼もしいですね。期待しています。」

王子が期待しているのは令嬢らしい振舞いであって、顔をよく見たいという意味ではないはずなのに、またしても顔が赤くなってしまった。

わたしは一体どうしてしまったのだろうか?感情がひどく揺れて上手く制御できない。

王子もきっと不審に思っていることだろう。もっとしゃんとしなければ。


「あなたの目の色は何色なんだろうか…」

「え?目の色、ですか?」

「ああ、すみません。呪いのせいで僕には黒い靄があなたの目を覆って見えているのです。

 僕だけがあなたの顔をきちんと見えないなんて、少し悔しいな。」

「まあ!」

王子はわたしにとってきちんと顔の見える数少ない一人であるのに、その王子は逆にわたしの顔がきちんと見えていないだなんて!なんて不思議なのだろう。

それと同時に、自分の顔が相手にきちんと認識されていないことを寂しく思った。父や母もこんな気持ちだったのだろうか。


「マキシミリアン殿下、わたしの目はアメジスト色です。

 呪いが完全に解呪された暁には、殿下にも見て頂きたいです。」

「ええ、楽しみにしています。」

とても嬉しそうに微笑んだ王子に、胸がドキドキして止まらない。なんでわたしもこんなに嬉しいのだろう。

しばらく静寂が流れた後に王子の従者の咳払いで現実に引き戻された。

そうだった。作戦会議中だった。しっかりしないと!


「…それでは、セイラ嬢は1つ目の作戦を希望ということでしょうか。穏便にことを済ませたいと?」

「はい、できればわたしの母とわたしが、今後スプングリス家で平穏に過ごすためにもあまり波風を立てたくありませんので。」

「そうですか…わかりました。僕はあなたの意見を尊重します。卿にも僕からそのように伝えておきます。

 卿は家族内がさらにギクシャクしてしまうのを憂いていましたから、あなたの慈悲深い決断に安心することでしょう。

 …生温いですが。」

最後は何か呟いていたがよく聞き取れなかった。

それより異母姉のためのパーティーだったことを思い出して、少し気が重くなった。今回ばかりは壁の花に徹するわけにはいかない。恥ずかしいが参加客の視線に耐えて顔を上げていよう。


「不安ですか?

 大丈夫です。あなたは僕とあなたの義母から遠く離れないようパーティー会場にいてくれれば。後は僕と卿で進めていきますから。

 成人誕生パーティーを台無しにしないとも約束してましたので、彼女への接触はパーティー終盤に行います。」

「わかりました。不安…はあると思いますが、首尾よく行って欲しいという気持ちが強いです。」

「そうです。不安な顔をせずに成功させると信じましょう。

 きっとすべて上手く行きますよ。」

そう言ってウィンクをした王子にまたもや胸がドキドキしてしまった。心臓がどうにかなるんじゃないかというくらい、今日はドキドキしっぱなしだ。


 わたしは義母の顔がキラキラ眩しいというのと、少し怖い気がして緊張するから苦手で、あまり関わってこなかったのでどんな人なのかよくわからない。

王子の励ましできっと義母も素直に解呪に協力してくれるだろうと、この時は軽く考えていたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

ヒロインが予定より早くデレてしまったので、王子様の片思いをキーワードから外しました(^^;)


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