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18.ガブリエルさんの報告

※服装と髪型について加筆しました

 王子からの連絡が来たのは下見へ行った日から7日後のことだった。


「サラ様、ようやく届いたようで良かったですね。」

「え?」

「毎日、手紙が来てないか確認なされていたじゃないですか。

 お目当ての方からの文なのでしょう?」

「違うわ、アルマ。恋文とかじゃないのよ!ただの連絡事項よ!」

「うふふ、わかりましたわ。」

アルマはわたしより少し年上で仲のよい友達のような、本当の姉のような存在の侍女だ。聖母様のような優しい微笑みを浮かべているように見えるのだが、今日はなぜかその微笑みが生温かく感じられて、むず痒くなってしまった。


 自室に入ってから手紙の内容を確かめると、5日後に神殿で会いましょうとのことだった。

下見の日からすでに7日が経過しているのに、さらに5日後とはずいぶんとゆっくりしているように感じられた。それともわたしの知らないところで何かが進行しているのだろうか?

あの油断ならない王子なら、何か驚くことがあっても不思議じゃないと思ったのだった。


 それと下見の日から4日後に父と面会していた。

3の月に入ってから社交シーズンも本格化しているためか、本館では頻繁に茶会等が開かれているし、父も参加しなければならない夜会が立て込んでいるのだろう。会えるまでにいつもより日数がかかった。

 まず何よりも母の呪いの可能性について伝えたかったのだが、父も同じくその可能性に思い至っていたようで、手配しているので心配しなくても大丈夫だと力強い言葉をもらえた。

次に、依頼者について見当がついたと伝えたらすまないと謝られた。父が謝るようなことはないのだが、義母をこのような愚行に走らせたのは自分のせいだといって、しきりに詫びていた。

 思えば父もショックを受けているのだろう。わたしの母も義母もどちらも父にとっては妻であり家族なのだ。その家族の一方がもう一方を害していたとしたら、当主としても夫としてもとても遣る瀬無い。

力のない父の様子にわたしはとにかく明るく元気に振舞って、父を励ますことしかできなかった。

 最後に解呪のための作戦について王子と謁見する予定になっていることを伝えたが、わかったの一言だけだった。





 さて、神殿へとやってきた。今日はわたしといつもの護衛2人だけで父は同行していない。名前を告げると再び貴賓室へと案内された。護衛の2人は部屋の外で待機しているので、わたし1人で王子の到着を待つ。

今日は緊張とは違うのだけれど落ち着かない。

本日の装いは初夏らしくレモン色の五分袖ワンピースで、お腹の部分でリボンを結んでアクセントになっている。髪は以前と同様に前髪を少し巻いて横に流しハーフアップだ。おかしくないよね?

 

 間もなくノックの後にガブリエルさんと一緒の王子と従者が入ってきた。


「お待たせしました、セイラ嬢。お元気でしたか?」

「お陰様でわたしは元気でございます、マキシミリアン殿下。ご機嫌はいかがでしょうか?」

「上々です。本日はまずガブリエル殿から報告を聞きましょう。」

「ご無沙汰しております、サラ様。その後不都合はございませんか?」

「ガブリエル様、先日はありがとうございました。わたしはこの通り大丈夫です。」

「それは何よりでございます。

 では私からサラ様のお母様について報告を致します。」

「母の!お願い致します。」

ガブリエルさんが一緒に来た時から、呪いについて情報があるのだろうと予想はしていたが、母と言われてびっくりした。何とか自分を落ち着かせて続きを待つ。


「スプングリス侯爵様よりご依頼されまして、マイラ様の診断を致しました。結果…呪われておいででした。

そして解呪を試みましたが、サラ様同様うまくいきませんでした。力及ばず大変申し訳ございません。」

ガブリエルさんはそう言って頭を下げる。


「いえ、頭を上げてください。

 あの、母は、呪いのせいで寝込んでいるのですか。呪いが祓えたらすぐ元気になるのですか?」

「それは解呪できてからでないと解りません。

 呪いはマイア様の身体を弱くする類いのものでした。ですがご本人様も心労があったことは確かでしょう。呪いが祓えた後は回復に向かうでしょうが、長期間にわたり身体も弱っておられるようですから、どれほど時間が掛かるかはわかりません。

 ただ一つ言えることは、このまま呪いがかかったままでしたら身体は回復しませんのでずっと寝たきりでいる、ということでしょう。」

なんてことだ…母は心労で倒れたのは事実かもしれないが、不当に長い間寝たきりになっていたということではないか。

それも義母が裏で企んだことだと思うと言いようのない怒りが沸きあがった。


「そう、ですか。診断して原因が分かっただけでもとても助かりました。

 わたしからも御礼を申し上げます。ありがとうございました。」

「本当に心苦しいですが…解呪の()()()()()()()()()またご依頼ください。

 では私はこれで失礼致します。」

まずは御礼をしなければと平静を装って返事をしたけど、ガブリエルさんが退室した後は再びいろいろな思考が頭の中を駆け巡った。


「大丈夫ですか?セイラ嬢。」

俯いていた顔を上げる。そうだった、まだ王子もいるんだった。


「はい、失礼致しました。少々混乱しておりましたが大丈夫です。作戦についてお聞かせ頂けますか?」

そうだ、完全解呪のためには義母に呪いについて認めさせて、負の気持ちを弱めさせないとならないのだ。気持ちを切り替えねば。


「作戦の前に1つよいでしょうか。」

え?まだ何かあるんでしょうか?


読んでいただきありがとうございます。

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