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17.揺れる感情

※危ない目にあった3回の詳細を会話に追加しました

※テラディウス公国をテラディウス王国に変更しました

 講堂から馬車の待つ正門までは少し距離があった。

そこまでわたしと共に歩きながら王子が質問をしてきた。


「そういえば先ほどの、呪いの効果としては曖昧という点で気になっていたのですが、あなたは悪霊が美しい顔に視えるのですよね。そのことで何か弊害はありませんでしたか?」

「そうですね、幼少の頃に三度ほど近づいてしまって危ない目に遭いました。その後は屋敷全体に聖域結界をはってもらったのと、悪霊だと認識したことで近づくこともなくなりましたけれど。」

「危ない目とは具体的に?」

「ええと、一度目は寒い冬に自邸の池のそばで悪霊が手招きしていまして、近づいて落ちました。ですが幸い風邪を引いただけで済みました。

 二度目は悪霊と追いかけっこをしていてバルコニーから落ちそうになりました。

 三度目は悪霊に誘われて門の外に出ようとしました。

 どれもひやりとしただけで済みましたので、大きな被害はありませんでした。」

「…」

王子は手を顎にあてて真面目な顔をして聞いていた。


「僕には悪霊が真っ黒なおぞましい姿に視えますし、普通は悪霊と視てわかるほど不気味な見た目なのですが。

 あなたの呪いの影響を考え直さないといけませんね。」

「そうですか?」

「僕は最初、あなたの呪いはあなたの挙動や価値観を歪ませて恥をかかせるためのものかと思っていました。実際僕を見て悪霊と勘違いしましたし。」

王子はにやりと笑う。これ意地悪ってやつよね?恥ずかしい…


「でも悪霊を美しく見せて油断させるというのは、一歩間違えればとても危険です。悪霊は悪意しか持っていませんから。

 ()()()は巧妙に、他者の仕業とは気付かせずにあなたを害そうとしたのかもしれません。陰湿で許しがたいことです。」

王子は立ち止まって真剣な顔でわたしを見ている。もしかしてわたしの為に怒ってくれているのだろうか?

こんな時はどう答えたらいいのかわからない。


「ええと、とにかくわたしは無事でしたし、今はおかしなお絵描き顔に笑ってしまいそうになるくらいなので、ちょっと迷惑ってくらいです。」

「あなたは自分のことなのに随分と心が広いですね。

 とりあえず馬車までもう少しなので歩きましょう。」

ふっと緩んだ顔はとても優しく見えたような気がして、そう見えた自分にびっくりした。



 わたしも馬車で来ていたので、護衛のアンドリューに伝えて王子の乗る馬車に乗り込み、スプングリス家の馬車の後ろを付いて行くことになった。馬車の中は王子と王子の従者、わたしの3人だ。なんだか落ち着かない。


「あなたの屋敷までどれ程で着きますか?」

「10分もかかりません。」

「作戦ですけれど、馬車の中でお話ししようと思っていましたが、詳細を説明するには些か時間が足りないようですね。

 後日改めてお会いできませんか?」

「え?改めてですか?」

「こちらから連絡致します。それと…」


 馬車は間もなく屋敷に着き王子と別れたわたしは別館へと入っていったのだが、それを窓辺から異母姉のクリスタが渋い顔で見つめていたのだった。




 翌朝、学校へ行こうと別館を出ると本館のメイドが、クリスタお嬢様がお呼びですので本館へお越しください、と話しかけてきた。

予想していたので驚きはないが、学校前に時間をとらないで欲しいなと心の中で溜息をつく。


「ごきげんよう、サラ。」

「おはようございます、クリスタお異母姉(ねえ)様。ご機嫌いかがでしょうか。」

「前置きはいいわ。あなた!昨日テラディウス王国の第四王子の馬車で一緒に帰宅したでしょう?

 あの方は私の成人誕生パーティーの主賓なのよ。

 色目なんか使って近づいて、不敬なことなんてしないで頂戴!

 あなたのせいでパーティーの出席を見送るようなことになったら許さないから!」

相変わらず派手な猫のように見える異母姉は、やたらと嚙みついてくる。


「クリスタお異母姉(ねえ)様。王子殿下とは下見で訪れた最高学府神学部の講堂にて、()()顔を合わせました。そして、スプングリス家のパーティーに招待されている縁で、屋敷まで送っていただいたのです。

 王子殿下はお異母姉(ねえ)様のパーティーに参加なされるのを()()()()()()()()、とおっしゃってました。」

「あら、そう…ご迷惑おかけしてないならいいわ。

 でも今後また、王子殿下のまわりをうろちょろしないで頂戴!」

フンっと顔を横に向けてしまった。なんとも直情型な性格だ。


「わかりました、お異母姉(ねえ)様。それではわたしは学校に参りますので、失礼致します。」

「ええ、どうぞ。お行きになって頂戴。」

異母姉は顔を横に向けたまま退室を促したが、長居は無用なのでとっとと出ていった。


 部屋を出るとサラはほっとして小さく息を吐いた。

昨日帰り際、馬車の中で王子が助言してくれて助かった。

異母姉に文句を言われたら先ほどのように答えるよう教えてくれたのだ。そう伝えれば異母姉も大人しく引き下がるだろうと。

その通りになって感心したのと、心情把握に長けていることにやっぱり油断ならない相手だと考える。少なくともあと2回も会うのか、と思ったら面倒だなという気持ちのほかにも胸がむずむずするような気持ちになって、何なのかよくわからなくなった。



読んでいただきありがとうございます。

思ったより早くサラがデレはじめてしまいました(^‐^;


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