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16.サラ勘付く

※サブタイトルを変更しました

 依頼主はまだ見つけてないはずなのに、どうして決着だなんて言ったのだろう?


「先生、それがですね。その時()()僕も神殿にいたものですから、僕の目で依頼主を見つける協力を申し出たんです。」

「ん?ああ…王子には呪いが見えるんでしたね。なるほど、なるほど。

 ではセイラ嬢、何か質問はあるか?」

王子とヒューゴさんのやり取りが意味深に聞こえたけど、なんだったのかな?


「どんな呪いをかけるかは選べるのですか?

 わたしの場合は人の顔の見え方に影響がありましたけど、呪いをかける程の強い邪念とは効果として見合ってない気がするのですが。」

「そうだな。だがさっきも言ったが殺生以外に被害や嫌がらせとして呪いを使う場合もある。

 例えば身体を弱らせて寝たきりの状態にさせる、目を見えなくさせたり耳を聞こえなくさせたり。これらは死なないまでも大きな実害だ。

 あとは子を成せない呪いなどは王族や貴族には致命的だろうし、顔にできものができる呪いは女性にとって脅威だろう?

 君の場合は依頼者がどんな呪いを望んだのか、そして呪術師がどんな術式を組んだのかわからないが、目立たぬものにしようとしたのかもしれないな。呪いとは気付かない程度の身体的障碍か生活に不便を生じさせるとか。」

嫌がらせと聞いて喜んで行いそうな人間が一人浮かんだが、生まれた頃から呪いがかかっていたことを考えると時期が合わない。それとわたしの母はずっと寝たきりの状態でもある。

とすると…


「では呪いをかけるには呪術師の接触は必要でしょうか?」

「それは必ずしも必要じゃない。

 王族や高位貴族に怪しい呪術師なんか近づけないだろう?呪術師もばれて捕まりたくないしな。だから遠隔で呪う方法を考えたんだ。

 一つ目は対象者の髪や爪、血液などを媒介にして本体に呪いを飛ばす方法。

 でもそれは効果も薄くてね。なにせ髪の毛1本程度じゃ大した呪いがかからない。かと言って大量に入手するのも難しいだろう?それで他の方法が考えられた。

 それが二つ目の物を媒介にして対象者に直に呪いに触れさせる方法だ。

 例えば、身に着ける貴金属類やハンカチ、髪留め、カフスなどに呪いを仕込んで対象者に渡せばいい。これなら呪術師が直接触れなくてもいいから簡単だ。物を渡すのは依頼者本人が多かった。贈り物や祝いの品として渡せば不自然でもないしな。」

「依頼者が…」

「そうだ、基本呪いをかけたい相手といったら身近な人物だからな。」

「身近な…」

「先生、研究会の時間もうすぐじゃないですか?」

「ん?ああ、少し話が長くなったか…

 あとはあなたに任せてもよろしいですか、王子?

 すまんセイラ嬢。君の呪いが早く解決することを祈るよ。もしまた何か聞きたいことがあったら、僕を訪ねてくるといい。では失礼する。」

ヒューゴ先生は急いで挨拶を述べると講堂から出て行ってしまった。

残されたわたしは王子に話しかける。


「あの、マキシミリアン殿下。

 依頼者を探す協力をして下さるとおっしゃってましたが、本日のこれがその協力だったんですか?

 ヒューゴ先生とのお話からわたしが依頼者に勘付くように仕向けたことが。」

「セイラ嬢、あなたが依頼者が誰か勘付くかどうかまでは確信してませんでした。

 しかし、ヒューゴ先生から呪術について学ぶことはあなたの為になると思いました。」

「では殿下はすでに依頼者に思い当っていたのですか?

 …わたしの義母であろうと。」

「そうですね。確証はありませんが怪しいと踏んでいました。

 ショックでしたか?」

「いえ、ショックではないです…いろいろ考えてみたら合点がいきました。

 あの、父はすでに知っているのですか?」

「卿も確信はしていないようですが、勘付いていますね。証拠を探っているようです。」

なんてこと。いろいろ考え出すと頭の中がぐちゃぐちゃだ。


 わたしの母は今、領地にある療養院で静養している。

男爵家から侯爵家に側室として嫁いできてから、慣れない環境や口さがない者たちの嘲笑に心労がたたって体調を崩した、と思われているからだ。でも、もしかしたら母がずっと寝込んでいるのは義母のせいかもしれないと考え出したら、静かな怒りが沸いてきた。

確かに母は強くはないかもしれない。でもとても優しい人だ。酷いではないか。


「これからわたしはどう行動したらいいのでしょう…」

「僕に作戦があるのですが、聞いてもらえますか?」

「はい。」

「では帰りは僕の馬車で送っていきましょう。その中でお話したいと思います。」

「わかりました。」

よし、こうなったら王子でも何でも解呪のために協力してもらおう!


読んでいただきありがとうございます。

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