14.最高学府への下見
遅くなりました。
長くなったので2話に分けました。14話は少々短いです。
3の月に入り社交シーズンも盛んになってきた。
スプングリス侯爵家でもいつもより頻繁に茶会が開かれ、夜会の準備も行われている。
しかし30の日の成人誕生パーティーと王族主催の夜会以外、サラにはあまり関係のないことだと思い学業に励んでいる。
また呪いの依頼者探しも父に任せきりにしている。王子も協力すると言っていたが今のところ接触はなく、また平和な日常を送っていた。
3から5の月は社交シーズン真っ盛りであるとともに、高等学校や最高学府への進学希望者用に学校が一般開放され、こぞって下見に行く時期となっている。サラも最高学府で神学を専攻する予定なので、早々に予約を入れておいた。
しかし以前は楽しみにしていた下見だが、王子と見知ってからはまた不意に出会いそうな不安の方が大きくなっていた。目立ってしまいそうな面倒な相手とあまり関わり合いたくない。
そしてその不安は的中してしまった。
神学部の担当者に案内されながら最高学府の構内を歩いていると、案内されるはずだった神学部講師のいる講堂にはあの王子とその従者もいたのだ。
「こんにちは、セイラ嬢。今日は下見に来たそうですね。楽しんでいますか?」
「ご機嫌いかがでしょうか、マキシミリアン殿下。
講師の方と大切なお話をしていたところを中断させてしまったようで、どうも申し訳ございません。
わたしは引き続き担当者の方に構内を案内してもらいますので、どうぞごゆっくりお話の続きをなさって下さい。失礼致します。」
少々早口で挨拶を述べて早々に立ち去る気でいると、王子が笑った。
「ははは、そんなに警戒しなくても。
僕は君を待っていたんですよ。少々お話がしたかったので。」
「お話ですか?この間の件ででしょうか。」
「ん〜そうですね。
神学部では貴族令嬢がとても少ないのですよ。神学部へは毎年20〜30人程しか入学してこないのですから。そちらの担当者に説明されたでしょう?」
「ええ、はい…」
今日はもっさり髪型なので少し俯きがちにすれば顔が良く隠れる。相手のペースに巻き込まれた気がしつつも仕方なしに会話を続けることにした。
「実際の在校生に案内された方がより頼もしいでしょう。顔見知りなら尚更。
僕は神学の中でも占術と呪術を主に研究しているのですが、興味はありませんか?」
「呪術ですか?」
「ええ、呪術は神学に関連があるのですよ。悪霊に呪われたときには祓い清めなければなりませんし、聖域結界は悪霊とともに呪いを退けるのに有用ですからね。
いかがです?僕はけっこう優秀な生徒だと自負していますが。」
「そうですね。少し見直しました。」
と言ってから不敬に気付いた!相手は王子だというのに!
「くくく。なかなか面白いご令嬢だ。あなたに靡かない女性がいたとは。」
笑ったのは元々部屋にいた講師と思われる人物だ。白く長い眉毛に大きな目と眼鏡、小さな口から出た声は若そうだけど梟のように見える男性だ。
「僕は講師のヒューゴ。ドノーラン侯爵家の分家にあたるドノーレン家の次男坊だ。
君がスプングリス侯爵家のセイラ嬢だね?学校内だから貴族におけるマナーは省略させてもらうよ。
ではここは後は僕に任せて。」
そういって手で合図をしたら下見案内の担当者が退室してしまった。そんな~!
「さて、自己紹介が途中だったね。僕は神学の歴史と呪術基礎を教えているよ。
個人的には呪術の歴史や術式を研究してる。」
「初めまして、ヒューゴ先生。ご存じでいらっしゃるとは光栄です。セイラ・スプングリスです。
来年度神学部に入学予定です。どうぞよろしくお願い致します。」
「セイラ嬢、あなたも呪いに興味がありますよね。
あなたの知っている呪いについて話してくれませんか?」
やっぱりこの王子のペースに巻き込まれている!これ確信犯よね?
読んでいただきありがとうございます。
学校では建前上、貴族の上下関係はなく生徒はみな対等な関係になります。
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