9.5 悪霊?!
僕は母の執念によって生まれた。
僕には3人の兄がいる。母は後継となる男子を3人も産んだので次こそは女の子を!と強く願って僕を生んだそうだ。
僕自身は母を愛しているし、母も男の子だった僕でも可愛がって育ててくれたので、生んでくれてとても感謝している。
そして僕のあとに女の子が生まれた。かわいい妹だ。僕が生まれたから生まれてきた女の子だ。
僕には生まれつき黒い靄と白い光が見える。これは後に呪われているものと神聖な力をもつものとわかった。
僕が母の腹部にまとまりつく黒い靄に気付いたため、母に男しか生まれない呪いがかかっていたことが判明した。そして呪いを祓い清めてようやく女の子が生まれた。
僕が役に立てて嬉しかったし、かわいい妹ができてとても嬉しかった。
僕は継承権も低いので割と自由にさせてもらえた。
だから僕はこの生まれ持った能力を家族のため国のために役立てられるよう、ヤーデリウス国の最高学府に留学しに来た。
僕の専攻は神学で、占術や呪術を主に研究している。
僕の能力は霊能力と聖なる力の両方だ。神官と司祭のどちらにもなれる。
僕自身にも呪いや悪霊から身を守る加護がついている。この加護を他人にもかけられるよう修練を積んでいるところだ。
それと僕の顔は自分で言うのもなんだけど一般的な顔よりも整っている。そのため女性に騒がれることが多くうんざりしていた。最高学府には女性が少ないので平穏に勉学に励むことができるが、外に出るとたまに女性に囲まれてしまうこともあった。
*
その日は雨だった。いつものように修練の為に神殿を訪れていた。
前から歩いてくる見知った女性神官と貴族令嬢の一行に気付いた。
俯いていて髪の毛で顔がよく見えないその令嬢は、僕に気付くと僕の顔を凝視して、そしてつぶやいた。
「なんでここに悪霊が…」
読んでいただきありがとうございます。
やっと王子様の登場です!
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