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8.報告と面倒ごと

遅くなりました。今回も少々長いです。


 治安維持部隊本部へ見学に行った翌日、父と面会した。


「お父様、ご機嫌いかがでしょうか。本日もお時間を頂きましてありがとうございます。

 早速ですが、昨日の見学の件につきまして報告と相談がありまして。」

「ああ、上々だ。サラに会えて嬉しいよ、愛しい我が娘。

 どうだったろうか。見学から何か得られたかい?」

護衛のアンドリューから一通りの報告を受けているはずの父だが、わたしから直接話を聞いてくれるようだ。


「正直言いまして、わたしの考えが甘かったことを痛感いたしました。

 女性の捜査官が活躍しているといっても、厳しい訓練を耐えうる方だけがなれるということを理解いたしました。頭で理解して(わかって)いるつもりで、本当の職務の大変さを理解できて(わかって)なかったのです。」

「ああ、訓練とはいえ想定する状況は厳しいものばかりだったろう。現場の任務では、貴族令嬢が目にすることがない荒事に遭遇する可能性があることを理解してもらえてよかった。

 物事には向き不向きがあるものだ。サラが霊能力を役立てたいという気持ちは尊重する。だが、それは捜査官でなくともできるだろう。」

「はい、お父様。よく理解いたしました。

 お父様はこうなることを見越して最高学府への進学をご提案くださったのですね?」

「そうだ。それにどうしてもサラに危ない目に遭ってもらいたくなくてね。過保護かもしれないが、可愛い娘なのだ。父の心情も慮ってくれると嬉しい。」

「うふふ、お父様。小さい子供ではないのですよ。」

垂れ眉の犬のように見える父が言うと可愛らしくて余計に胸がきゅうとしてしまうではないか。

二人で顔を見合わせクスクス笑いあった。

 

「それででして、今は神官についてよく知りたいと思っています。もちろん最高学府に進学してからでも学べますが、今後の指針について考える為にも神官様にお話を伺えたら、と考えています。」

「そうか、神殿を訪問してみたいということだな。

 よし、わかった。なるべく早くその機会を設けられるよう伺ってみよう。」

「ありがとうございます、お父様。」

こんなにも物事が上手く運んでなんだか恐ろしいくらいだわ。と思ったら…


「あと私からも話があってね。

 来月の30の日にクリスタの成人誕生パーティーがあるのは知っているね?

 もちろんサラも出席するんだが、ドレス一式と当日のヘアメイク等はパトリシアの方で請け負うそうだ。

 なに、心配はいらない。パトリシアは侯爵家としての品格をちゃんと弁えているから、クリスタのパーティーを盛り下げるような下手な物は用意しないさ。」

父はそう言うが、それでも何となく不安が募る。


「ドレス選び等について打ち合わせをしたいそうだから、後日本館に行ってくれ。向こうから連絡が来るだろう。」

「わかりました、お父様。過分なお気遣いですが、有難くお受けいたします。」

断る権利はこちらにないので大人しく従うことにした。





「はぁ、絶対に何か魂胆があるんですよ。こちらでもドレスは準備しておりましたのに。」

本館へ向かう道すがらアルマがまだ納得がいかないようで憤っている。

こちらの方が立場は低い。ゆえに大人しく受け入れた方が波風が立たないのだ。



「お久しぶりです、お義母(かあ)さま。ご機嫌いかがでしょうか。」

「ご機嫌よう、セイラ。」

今日の義母は扇で顔半分を隠してくれているのでキラキラと眩しいのも半減。よかった。

クリスタが同席してなかったのもホッとした。


「この度はわたしにもドレス一式ご用意頂きましてありがとうございます。

 ご連絡いただきまして早速やって参りました。」

「いいえ、クリスタの成人誕生パーティーとはいえ、あなたもクリスタの異母妹(いもうと)として美しく着飾って参加して頂きたいのよ。

 余計なお世話かとも思いましたが、こちらで用意させて頂きたいの。よろしいかしら?」

提案の形で聞いてはいるが、拒否権のない命令のようなものだ。


「はい、是非ともよろしくお願いいたします。」

「時間もあと1月と半分しかないから、こちらでデザインを見繕ったわ。あなたはあまり目立つのがお好きではないから、なるべく華美になりすぎないシンプルで上品なものをお願いしたのだけど、こちらのデザイン案ではどうかしら?気に入るものがあるといいのだけれど。」


 裏読みすると義母パトリシアは“目立ちすぎるものは着ないでちょうだい、シンプルなものでお願いするわ”と言っているのだ。

パトリシアの侍女からわたしの侍女アマルへと手渡されたデザイン画を開いてみると、夜会用には主流とは言えないラインばかり並んでいると思われた。

しかし3つあるデザインは言葉の通りどれもシンプルだけど上品な、地味にならない絶妙なところをついている。サラにはどれも控え目で好ましく見えたし、どれもサラに似合いそうなものだった。

もちろん素材は最上級のシルクをはじめレースに刺繍とふんだんに使われるのだ。侯爵令嬢として申し分のないドレスになるだろう。


 中でも特に気になったのが(すみれ)色のエンパイアラインのドレス。

デコルテを広く取り、肩部分はレースになっていて切り替えから上全体に美しい図案の刺繍が施されている。ところどころにアメジストの小さな宝石も縫い付けられるようだ。とても豪華だ。

切り替えから下はドレープが幾重にも重ねられてふんわりと柔らかなシルエットを描いている。手首に巻く濃い紫のリボンとパンプスがセットだ。

わたしのシルバーブロンドの髪とアメジスト色の瞳に合わせた色使いなのだろう。

このデザインは確かに豪華さはないけど普通にかわいい。コルセットをきつく締めないでいいのもサラとしては◎だ。


 3つのデザインを何度も眺めた後に義母に返事をした。


「お義母様、お待たせ致しました。どれも素晴らしいデザインで大変嬉しいです。

 今回はこちらのエンパイアラインの菫色のドレスに決めたいと思います。」

「気に入ってもらえたようで嬉しいわ。ではそちらをご用意しますわね。

 仮縫い合わせは別館のほうにお持ちするようにしますわ。よろしいかしら?」

「ええ、それで構いません。」

今後また本館に来なくてもいいようだ。よかった~。


「あと当日はヘアとメイクもドレスに合わせて行いますので、こちらにおいで下さるかしら。」

「はい畏まりました。すべてご手配いただきまして恐縮です。心より感謝いたします。」

「出来上がりが楽しみですわね。」

退出したあと別館にもどる道すがらまたアルマがぶつくさと文句を言っていたが、面倒ごとが終わってどっと疲れたので聞き流したのだった。


さて、次は待ちかねた神殿への訪問だ。


読んでいただきありがとうございます。

後半のドレス、ほかのデザイン案も詳細を書き連ねたのですが長くなったので没にしました(泣

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