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1.裏路地に視えた

初投稿です。見切り発車なのでうまく着地できるか(汗

 今日も晴れやかな空で気持ちのいい朝だ、と思ったのに最悪だ。思わずちっと舌打ちをしてしまった。


 学校に向かう道すがら建物の間にある薄暗い裏路地の入口に、にたーっと気味悪い笑顔が見えた。

目は大きく睫毛は長く影を作り、細く高い鼻梁に形のいい唇と、全体的に整った顔は一般的に美形と言われるもの()()()()


 であろうと断定できないのは、わたしの目には人間の顔がちゃんと映らないからだ。抽象的なと言ったらいいのだろうか、お絵描きのようなものに見えるのだ。だから画や彫刻や精巧な人形でしか、人間らしい本物の顔を見たことがなく、美醜というものがいまいちよくわからない。

唯一の例外がアレ、時折見かける死霊なのだ。しかも悪霊。


 わたしの場合、ふつうの人間の顔をうまく認識できないせいなのか、死霊の顔も同じようにお絵描きのように見える。でも悪意のある霊の場合、やたらと精巧な顔、所謂美形でにこにこと笑顔を向けてくる。もしふつうの人で霊が見える人だったらドキッとして見とれてしまうのだろう。

だがわたしは今までの経験で悪霊だとわかっているので、あの笑顔がとても胡散臭いし薄ら寒いし、とてもイラっとする。

 とにかく、あの裏路地に悪霊が佇んでいるということは、あの奥に進むと()()()()見つかる可能性が高い。遅刻してしまうが、とりあえず治安維持警ら隊の詰め所に出向いて、あの奥で何か事件がおきたか調べてもらおう。誰か公認霊能力捜査官が派遣されてくるだろう。



 授業に15分ほど遅れてしまったが、捜査協力証明書というのを発行してもらったので学校側への問題はない。ただ、生徒全員に事情を説明してまわるなんてことはしないので、遅刻癖のある不真面目な生徒だとまた陰で噂されるだろう。変人扱いをされるのは慣れているが多少はげんなりする。

だが何よりも鬱陶しいのが…


「サラ、あなたまた遅刻してきたのですって?どこを寄り道してきたのかしら?

 スプングリス家の恥となるような行為はやめて頂けませんこと?

 相変わらず侯爵家の令嬢とは思えないほど冴えない格好をしていて陰気臭いですし。」

強調された睫毛が特徴の猫のような顔の、異母姉のクリスタが小首をかしげ腕組みをしてわたしの行手に待ち構えていた。


「出たっ。…ゲフンゲフン」

いけない、つい本音が漏れてしまった。

冴えない格好とはもっさりとした髪型のことで陰気臭いとは俯きがちであることだろう。長目の前髪も俯いているのも目立たずにいるにはちょうどいいのだ。地味女子上等だ。


「クリスタお異母姉(ねえ)様、警ら隊の詰め所に少し寄っていただけです。証明書もちゃんと学校に提出しましたし、何もいかがわしいことはしていません。」

「あぁ、あの視えないものが視えるってことですけど、どこまで本当なのだか。適当なことを言って言い訳にしてる可能性もあり得ますからね。疑われても仕方ないですわよ。

 こんなのが姉妹と思われるなんて恥ずかしい・・・とにかく奇行はやめていただきたいわ!」

一方的に捲し立てて立ち去って行った。


「猫を被らない猫ね」

こぼれ出た小さなつぶやきをまわりの聴衆に拾われていたのだが、本人は気付いていない。こういった失言とも毒舌ともいえるつぶやきを、今までにも幾度となく聞かれてしまっていたことが、侯爵令嬢であるサラをちょっと変わった人(ミステリアス)に見せてきたのだが。 

本人といえば、勝手に大事にしているのはそっちだと思うんだけど…異母姉とはいえさっぱり理解できないから嫌っているなら放っておいてほしい、などと考えていた。


 わたしは一応侯爵令嬢である。けれども母は本妻ではなく愛妾であった。

義母は異母姉のクリスタほどあからさまではないけれど、あまりいい感情を持たれていないのはなんとなくわかっていた。わたしの顔はかなりの美形に入るらしくそれも気に入らないようだ。例のごとく美醜のよくわからないわたしにはさらさら自覚はないが。

クリスタはクリスタで前髪であまり目立たぬようにしているのに、今度は冴えないだの陰気臭いだの何か文句をつけずにはいられないようで、本人こそ淑やかさが何かを一から学びなおしたほうがいいと思う。

 

 学校を卒業したら煩わしい貴族の家など出て自活したいものだ。現時点でもわたしは本宅ではなく別館で暮らしているのだ。それに母もいないことだし。幸いと言っていいのか霊能力があるので公認資格をとったら捜査官として自活し(いき)ていけそうだ。

 16歳で成人となるこの国、ヤーデリウスでは高等学校に通うのは貴族や裕福な家庭の子息に限られている。なので一般基礎学校を卒業した13歳以上の子供は見習いとして働き始める。農民だと学校に行きながら家の手伝いとして幼いころから働いているのが大半だけれども。

 異母姉も異母兄もいることだし、貴族籍から離籍して平民になっても問題はないはずだ。

あと1年と少しで卒業を迎える前に、そして貴族の婚約者なんてものをあてがわれる前に、父に話してなんとしても家を出たい。

家に帰ったら執事のハワードに父と面会できるようにお願いしよう。


読んでいただきありがとうございます。

当初の設定よりもだいぶ大人しい性格になってしまいました(汗


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