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085 / 巨大木人との死闘(1/2)

「フェリテ、逃げるぞ! さすがに不味い!」


 フェリテの手を引く。

 だが、彼女は頑として動かず、巨大木人が作り出した穴を見つめていた。


「……空間がある」


「空間?」


「あの樹の中、広い部屋になってる!」


 言われて、巨大木人の背後を見る。

 無数の敵性精霊が木人になることで作り出された、神樹の虚穴。

 精霊の光が差し込むそこには、フェリテの言う通り、空間が広がっているように見えた。

 隠されていたのだ。


「リュータ、あそこに何かあるかも」


 そう告げて、フェリテが背中の戦斧に手を伸ばす。


「あいつを倒さなきゃ、調べられない!」


「……わかった」


 俺もまた、覚悟を決める。


「極大呪も、大呪も、使わない。それでいいか?」


「当然!」


 巨大木人が足を振り上げ、俺たちを潰そうと一歩を踏み出す。

 鈍重に見えるが、それは巨大ゆえだ。

 実際は、見た目より遥かに速い。


「!」


 俺とフェリテは、弾かれるように反対側へと飛び退いた。

 巨人の足が叩き付けられ、もともと朽ちていた石畳が粉々に砕かれる。


「──ああああああああッ!」


 その隙を見逃さず、フェリテが、巨大木人の左脛に戦斧を思いきり叩き込んだ。


 ──カァン!


 樫並みに硬い巨大木人の足に、戦斧が見事に食い込む。

 並みの木人であれば一撃で粉砕できるのだが、巨人の足はあまりに太かった。

 両断することは叶わない。


「あっ!」


 フェリテが、慌てて戦斧を引っ張る。

 戦斧の刃が食い込み、抜けなくなってしまったらしい。


「フェリテ、いったん離──」


 言い切るより早く、巨大木人が動いた。

 フェリテを振り払うように、左足を思いきり蹴り上げたのだ。


「わああッ!」


「やっぱ離すな!」


 最高度で手を離したら、どこまで飛ぶかわからない。

 容易に人が死ぬ高さなのだ。

 幸い、手を離すことなく、戦斧がすっぽ抜けることもなく、巨大木人の足がそのまま振り下ろされた。


「──あ、……ぐッ」


 当然、無傷とは行かない。

 踏み潰されることこそなかったものの、フェリテの体が地面へと叩き付けられる。


「──フェリテ!」


 フェリテの元へ駆け寄り、彼女を抱き上げる。


「く……ッ」


 女の子とは言え、軽鎧メイルを着込んだ人間だ。

 無理に持ち上げたことで、腕にビキリと痛みが走る。

 だが、そんなことを言っている場合ではない。

 そのまま駆け出し、神樹の周囲を回るようにして巨大木人から距離を取る。

 悪路であることが幸いし、巨人の歩みは遅かった。


「フェリテ、平気か」


「だ、だいじょ、ぶ……!」


「無理するな。治癒薬は出せるか?」


「うん……」


 もしものときのために、背負い袋だけではなく、腰に提げた革袋にも治癒薬が入っている。

 幸い、小瓶は割れてはいなかった。

 フェリテが、俺の腕の中で、粘性のある治癒薬を嚥下する。


「──あち、あちち……」


 十秒ほど熱に苦しんだあと、気丈にも俺に笑顔を向けた。


「ふっかーつ!」


「よし!」


 フェリテを下ろす。

 巨大木人とは、まだすこし距離を保てている。


「あたしの戦斧、まだ刺さってる!」


「随分と深くまで食い込んだな……」


 フェリテの馬鹿力でなければ、蹴り上げられたときに、戦斧がすっぽ抜けて高々と吹き飛ばされていたかもしれない。

 そう考えると、背筋がぞっとした。


「フェリテ。戦斧に炎属性を付与する。たぶん焦げて落ちるから、それを拾って攻撃に転じるぞ」


「わかった!」

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