080 / 深夜、二人とセッションを(3/5)
「巨狼は風嵐呪を使用。これは範囲魔法攻撃となる」
「範囲……!」
「二人同時、ですか」
「その通り。魔術判定は──」
六面ダイスを四個振る。
「成功だな。ダメージを出すけど、どうする?」
フェリテに視線を向ける。
「……かばっていいの?」
「当然、構わない。だが、自分もターゲットにされている状態で仲間をかばった場合、自分と"アーネ"、二回分のダメージを受けてもらう」
フェリテが即答する。
「じゃ、かばう!」
「フェリテ、危険です!」
「"フェリテ"は魔法防御力も高めだと思ったから、大丈夫だよ。それに、どうせこのラウンドは攻撃できないんだもん。もともと治癒薬飲むつもりだったから」
「……わかりました。いつも、ありがとうございます」
「持ちつ持たれつ、だよ」
「はい」
二人の会話が途切れるのを待って、言葉を挟む。
「では、風嵐呪のダメージを出す。さあ、祈れ」
「祈れ!?」
四つの六面ダイスを転がすと、総計で15の目が出た。
「これに12を足して、ダメージは27だ。これが二回飛んでくる」
「え、待って待って待って! "フェリテ"のHPが55だから──残り1!?」
「いえ、違います。二回分の攻撃それぞれから魔法防御力が減算されるはずです。"フェリテ"の魔法防御力は何点ですか?」
「えっとー」
フェリテが自分のキャラクターシートを覗き込む。
「魔法防御力は、5!」
「では、攻撃二回分で10点が減算されて、残りHPは11となるはずです。合ってますか、GM」
「正解。では描写へと移る」
脳内で、"フェリテ"と"アーネ"の死闘を再生する。
「巨狼は君たちから数歩距離を取ると、天井に向かって高らかに啼いた。その瞬間、ピシッ、ピシッ、と空気が弾ける。風嵐呪だと気付いた時には、もう遅かった。真空が作りだした目に見えぬ刃が、君たちを襲う!」
「──"アーネ"! と叫んで、"アーネ"の前に飛び出すよ」
「真空の刃が、"アーネ"をかばった"フェリテ"の肉を切り裂いていく。鋭い刃物で切りつけられたかのような傷が、鎧から露出した部分に無数に浮かび上がる。血液が飛び散り、後から後から痛みが走る。"フェリテ"は、たった一瞬で満身創痍にまで追い込まれた」
「"フェリテ"! そんな、私をかばって……」
「あたしはいいから! あいつに火炎呪を!」
「はい! と頷いて、前進と共に詠唱、巨狼に火炎呪を放ちます」
「魔術判定をどうぞ」
アーネがダイスを振る。
「成功。ダメージ出します」
次にアーネが手にのは、七個の六面ダイスだった。
「ダメージは、7D6+19ですね」
「わあ」
出目は、28だった。
つまり、
「──47点ダメージ。いかがです?」
「強くなったなあ……」
記念すべき最初のダメージダイスは、たったの2D6+13だったのに。
「"アーネ"の放った火球は七本の炎の矢へと形を変えて、巨狼の銀の毛並みに突き刺さる。さしもの巨狼も痛みを感じたのか、苦しげにうめき声を上げるだろう」
「よかった、効いているようです」
「物理も効けばいいなあ……」
「では、"フェリテ"のメインプロセスだ」
「巨狼に全力で近付きながら、高級治癒薬飲みます。回復量は8D6でよかった?」
「合ってるよ」
「じゃ、振るね。──25回復で、HPは36点!」
「次はかばわなくて構いませんからね。今度こそ"フェリテ"が死んでしまいます」
「うん、気を付ける……」
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