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071 / 作戦完了

「──……ふー」


 生命薬を飲み干し、フェリテに礼を言う。


「ありがとうな。ほとんど全快だ」


「よかったー……!」


「これ、すごいな。マジで効果絶大だぞ」


 この生命薬があれば、極大呪を連発することもできるだろう。

 絶対健康に悪いと思うけど。

 ルクレツィアが、呆然と呟く。


「──これが、極大火炎呪……」


 グラナダが納得したように頷く。


「そりゃ、やつらも逃げ出すわけだ」


 ナナセが呆れたように尋ねた。


「アンタ、どうして吟遊詩人やってんのよ。もしかして魔法使いから転職した手合い?」


「……まあ、そんなとこ」


 いちいち誤魔化すのも大変だな、これ。

 あらかじめ嘘の設定を練り込んでおいたほうがいいのだろうか。


「わたくしも、呪文への理解を深めれば、リュータさんのような極大呪使いになれますでしょうか……」


 俺の能力は、〈ゲームマスター〉によって付与されたものだ。

 実力ではない。

 だからこそ、真摯に答えるべきだと思った。


「……わからない。わからないけど、それを目指すのはルクレツィアにとって何物にも代えがたい経験になるはずだ。その過程で得られるものは、必ずあるから」


 上を目指すこと。

 歩みを止めないこと。

 諦めないこと。

 それを成すためには、並々ならぬ決意が必要だ。

 だからこそ、価値はある。

 俺はそう思う。


「……ありがとうございます。リュータさんの言葉を心に秘めて、いつか極大呪を扱える自分になろうと思いますわ。このままでは、悔しいから」


「ああ、それがいい」


「まずは詠唱破棄から、ですわね。呪すら完璧に理解できないようでは、大呪も極大呪も夢のまた夢です」


 ルクレツィアの認識は正しい。

 呪、大呪、極大呪には、それぞれ難易度に大きな隔たりがある。

 呪を小学校の算数だとすると、大呪は中学相当の数学、極大呪は大学数学ほどの違いだ。

 極大呪も、大呪も、呪を理解していることが前提となるため、呪をノータイムで発動することができなければ大呪の習得は不可能と言える。


「ひとまず、溶岩が冷え固まるまで休憩としようか。このままでは歩けもしない」


「さんせー」


 グラナダの提案に、ナナセが同意する。


「あと、暑いわここ。すこし戻りましょ」


「だねー」


「ええ、そういたしましょう。喉が渇いた方は遠慮なくおっしゃってください。水を出しますから」


 思わず感心する。


「やっぱ、水の使用に制限がないのは便利だよな。俺も水撃呪学ぼうかな……」


 ルクレツィアが微笑む。


「水球までは放てずとも、生活水を生み出す程度であれば、火炎系統を極めているリュータさんであれば難しくはありませんわよ。よろしければお教えいたしましょうか?」


「……いいのか?」


「詠唱破棄の一件で、借りがございましたからね。これで、貸し借りなしということで」


「マジでありがてえ」


 フェリテが嬉しそうに頷く。


「これで、水袋の中身を気にせず顔が洗えるんだね! やった!」


〈ゲームマスター〉に頼らず魔法を習得する。

 それは、きっと、俺自身の糧となる。

 自らの努力によって得た成果こそが、真に価値あるものだと思うからだ。


 俺たちは、それから二泊三日ほどをかけて、第五層の魔物を徹底的に駆逐した。

 あの大コウモリも、擬態スライムも、双頭の蛇も、空飛ぶ目玉も、二度と現れることはないだろう。

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